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ナディアの誓い - On Her Shouldersの小のレビュー・感想・評価

4.5
泣いた。それは多分『バハールの涙』を観たからだと思う。

ISIS(イスラム国)による少数民族「ヤジディ教徒の虐殺」。少女や女性たちは戦利品として売買や交換の対象となり、23歳のナディアさんは性奴隷となった。

脱出に成功したナディアさんは、自らの体験を世界中で語るようになる。そうした行動が国際社会を動かし、2015年12月に国際連合安全保障理事会の場でISISの虐殺や性暴力について証言。2016年9月には国連親善大使に就任し、2018年ノーベル平和賞を受賞した。

ヤジディ教徒の希望の存在となったナディアさんの素顔はごく普通の女の子で、本心では人前になんて立ちたくない。しかし、そんな彼女が表舞台に立ち続ける固い決意を、彼女の姿や表情が映し出す。

本ドキュメンタリー映画だけでも十分心を打たれるけれど「ヤジディ教徒の虐殺」をテーマに、ISISと戦うことを選んだ女性の物語を描いた劇映画『バハールの涙』で、虐殺と性奴隷の様を映像で観ていたお陰で、何故ナディアさんがこれほどまでの強固な意志を持ちうるのかが良くわかる気がして、心震えた。

ナディアさんは言葉を武器に命がけで戦っている。その壮絶な生き様が、劇映画で銃を手にして戦うバハールと重なり、ナディアさんもまた戦士なのだと思う。

ほかにも、人間同士が生きるということはどういうことかについて学んだ気がする。ナディアさんが国連親善大使に任命された際のスピーチで、確か「自分にも人間らしく生きる権利がある」というような趣旨のことを述べ「世界中にいる弱い立場の人々を守れるかどうかは、あなたがた次第なのだ」というシーンがあった。

映画『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』とその原作本でも同じようなことを言っていると思うけれど、人には人間らしく生きる権利が等しくあるのであれば、弱者は人に頼るのが当然の権利だし、頼られた人は弱者ときちんと向き合わなくてはならないのだ。

ナディアさんの著書『THE LAST GIRLーイスラム国に囚われ、闘い続ける女性の物語― 』もポチらざるを得なくなった。
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