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ウエスト・サイド・ストーリーのYYamadaのレビュー・感想・評価

4.1
【音楽映画のススメ】
~ 音楽と映像の素晴らしき
   コラボレーション

◆作品名: ウエスト・サイド・ストーリー
(2021)
・作品のジャンル : ミュージカル
・楽曲のジャンル : オリジナル

〈本作の粗筋〉 eiga.comより抜粋
・1950年代のニューヨーク。マンハッタンのウエスト・サイドには、夢や成功を求めて世界中から多くの移民が集まっていた。
・社会の分断の中で差別や貧困に直面した若者たちは同胞の仲間と集団をつくり、各グループは対立しあう。特にポーランド系移民の「ジェッツ」とプエルトリコ系移民の「シャークス」は激しく敵対していた。そんな中、ジェッツの元リーダーであるトニーは、シャークスのリーダーの妹マリアと運命的な恋に落ちる。ふたりの禁断の愛は、多くの人々の運命を変えていく…。

〈見処〉
①名匠スティーブン・スピルバーグ、
 伝説のミュージカル映画に挑む——
・『ウエスト・サイド・ストーリー』は、2021年に製作されたミュージカルロマンス映画。1961年にも映画化され、アカデミー賞10冠を獲得した名作ブロードウェイミュージカル「ウエスト・サイド物語」のリメイク作品。
・主演は『ベイビー・ドライバー』のアンセル・エルゴートがトニー、オーディションで約3万人の中から選ばれ、ディズニーの実写版『白雪姫』に起用されたことも話題となった、新星レイチェル・ゼグラーがヒロインのマリアを演じる。
・また、1961年のオリジナル版でアニタ役でアカデミー助演女優賞を受賞しているリタ・モレノが本作の製作総指揮を務めると同時に、ヴァレンティナ役として出演。凛とした歌声を届けている。
・本作は、2019年9月には撮影が完了し、2020年12月に劇場公開を予定していたが、コロナ渦の影響により、米国公開は、2021年12月10日まで延期となった。製作費
1億ドルの回収も困難なほど、北米興行面は苦戦をしているが、批評家からは「スピルバーグ作品の集大成」と高く評価され、第79回度ゴールデングローブ賞では、ミュージカル・コメディ部門の作品賞、主演女優賞、助演女優賞(アリアナ・デボーズ)の3部門で受賞。第94回アカデミー賞では、監督賞、助演女優賞(アリアナ・デボーズ)、撮影賞、美術賞、衣装デザイン賞、録音賞の主要7部門にノミネートされた。2022年3月24日の授賞式の結果を待ちたい。

②スピルバーグとミュージカル
・本作は、スティーブン・スピルバーグによる長編劇場公開作品監督33作目にして、初のミュージカル作品となる。
・幼年期から1961年製作のオリジナル版に馴れ親しんでいたスピルバーグは、早くからミュージカル映画を手掛けたい意向をもち、『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』(1984)では、プロデューサーを務める盟友ジョージ・ルーカスから冒頭のナイト・クラブシーンにミュージカル演出を加えてもらうほど。
・スピルバーグにとって、最もミュージカル作品の監督に近づいたのは、1991年にロビン・ウィリアムズ主演で製作した『フック』。ピーター・パンの大ファンであるスピルバーグは、本作のミュージカル映画化を準備していたが、撮影開始後の最初の週を終えた時点で方針を変更、用意した全ての楽曲を外す判断をする。
・スピルバーグ曰く「自分が監督してきた中で最大の方向転換だった。ミュージカルをやる準備ができていなかったのかもしれない」と語り「自分の信念を貫く勇気を持たなければならない」と考え、ミュージカル映画をやることを決心し、2014年から、スピルバーグは、伝説のミュージカル作品の再映画化に動き出した。

③結び…本作の見処は?
◎: ストーリー展開は、概ね1961年版に踏襲するが、より俯瞰した画面構図を施し、ダンスパートの躍動感は、明らかに本作が勝る。また、ヤヌス・カミンスキーによる陰影の大きい撮影技法や、感動を呼ぶラストシーンの演出など、誰もが尻込みする「伝説的映画のリメイク」という無謀なチャレンジに対して、スピルバーグは完全勝利している。「史上最高のリメイク映画」は褒めすぎかもしれないが、スピルバーグの才能は、依然として現役最前線であることを証明している。
◎: 撮影時に88歳であった伝説の大女優リタ・モレノが、本作ではオリジナルのドクに相当するキャラクターであるヴァレンティナ役を演じ、終盤の重要なシーンでは、アリアナ・デボーズと新旧アニタが対峙。「自分が自分を助ける」時空を超えた共演が感動を与える。
◎: アンセル・エルゴート含む男性陣の輝きが霞むほど、ミュージカル演者として、レイチェル・ゼグラーとアリアナ・デボーズの女優2人の圧倒的な力量を見せつけている。

「本作を見てから旧作を見るか?」「旧作を見てから本作を見るか?」…評価が別れるところであるが、先に旧作を見ていたほうが、「映画の進化」「リタ・モレノ登場の意義」「ラストシーンの余韻」を感じ取れて良いと思います。
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