平野レミゼラブル

惡の華の平野レミゼラブルのレビュー・感想・評価

惡の華(2019年製作の映画)
4.9
最速試写会にて観賞。
観る者の脳髄を直接掴んでグチョグチョのどろどろべちょべちょのズクズクにするどうしようもなく破壊的で破滅的な青春映画にして傑作。ヤベェーもんを観てしまいました……

いやね、イロモノB級映画の帝王である井口監督に、脚本にマリーって組み合わせの時点で、あのあまりに前衛的な演出と「ハナガサイタヨ…」でカルト化したアニメ版に匹敵させる狂いっぷりを期待してはいたんですが、まさか全うに凄い実写版としてぶん殴られるとは思わず本当にビビッた……
ゼッテェー相性は良いと確信はしてたんですが、そんな今年のベストに躍り出るレベルの傑作になるとは思いもよらなかったです……僕はクソムシです、ハイ

まずですね、役者陣が完璧です。特に玉城ティナ演じる仲村さんは純度100%の仲村さん。さらに彼女の丸く大きな瞳が要所要所でボードレールの惡の華の挿絵と完璧にシンクロする。どこまでもエキセントリックに狂ってるけど、結局のところは思春期の少女って可愛さも滲み出ていてマジで適役。
仲村さんの原作通りっぷりは作者の押見先生が「完璧な仲村さんがそこにいて可愛すぎる…!」ってクソ気持ち悪い(褒めてる)コメントしてたことからも明らかです。

上映後のトークショーの一幕
井口監督「春日と仲村さんが伊藤健太郎くんと玉城ティナさんでは、あまりに美男美女すぎるって前評判がありまして……」
押見先生「えっ?仲村さんはいくら可愛くたっていいじゃないですか(素)」

押見先生、あまりに仲村さんを理想として投影しすぎてて気持ち悪い(褒めてる)
しかし、原作者としては自分の理想の塊がリアルでそこにいるって気持ち悪いくらいに興奮しちゃうの最高すぎるし、羨ましすぎるし、気持ち悪すぎるんだよな。
原作者がそんな風に一番はしゃいでたって時点で本作の素晴らしさ、伝わって頂けたんじゃないでしょうか。

また美男すぎると言われた伊藤健太郎くんの春日ですが、こちらも滅茶苦茶等身大の思春期中二病男子を演じていて良かった。作中で何回も叫ぶのにまるで気にならないのはもう純粋な演技力の高さ。ただ一点どうしても気になることとしては、ひ弱な文学少年のくせに体があまりにマッチョすぎる…!
ただこれに関しては押見先生がかなり納得いくフォローしてくれまして、
「惡の華は春日の脳内を映した作品なんで、きっとあのマッチョな春日は彼のナルシズムの投影なんですよ」

滅 茶 苦 茶 腑 に 落 ち ま し た


ストーリーに関しては実写映画において最高峰と言って良い出来の良さを見せる。
ぶっちゃけね、全11巻ある原作を中学篇だけでなく、高校篇まで組み込むって知った時は流石に「正気か!?」ってなったし、実際映画で高校篇入ってから「あーやっぱり詰め込んだせいで中学篇おざなりじゃんかァ」って思ったんですよ。ガッカリしたんですよ。

そ っ か ら ま た 中 学 篇 詰 め 込 ん で く る ぞ

その構成が本当に見事も見事で、高校篇まで組み込んで面白い場面を全部詰め込んでるのに、まとまっていて破綻していない。よってドッカンドッカンとクライマックスの如しカタルシスが次から次へと押し寄せる。
特に中学篇は鬱屈した青春を送った人、もしくは今もまだ息苦しさを感じている人、中二病を罹患した覚えのある人には特にブッ刺さるド級のエンタメ映画と化す。そして、原作者と監督が揃って「中学篇だけでは無責任な作品になる」と語ってぶち込んだ高校篇がそんな閉塞と思春期への優しい救済として機能する。
間違いなく劇薬の類ではあるんだけれども、観終わった後は爽やかな気分であるということだけは保証できる。

唯一不満と思えるところは佐伯さんとの初デートで春日にぶっかけるのがバケツ水じゃなくてコーラだったってところくらいだよ!(原作及びアニメの「どっからバケツ持ってきたんだよ!」ってコントっぽさが最高に好き)

駄目だ……あまりに書きたいことが洪水のように流れ込んできて全然まとまらん……一つ言えることはあの膨大な原作の見所で皆が見たいところは確実に詰め込まれてるし、しかも中学篇だけじゃなく高校篇まで入れてこの濃度だぞってことだ。間違いなく井口監督最高傑作だし、今年の暫定1位です。

超絶オススメ!!

余談として上でも結構書いたけど、井口監督と押見先生のトークショーも最高でしたね。
あと原作既読者向け試写ってこともあって、Q&Aで質問してた2人が両者ともに中学時代からの熱心な読者だったのが凄いよ。俺、思春期に原作読んでたらなんかやらかしてたかもわからんぞ。そんなQ&Aの人達も、マジで思春期に多大な影響及ぼされたんだなってのが伺えてとてもよろしかったです。
今度は間違いなくこの映画が全国のクソムシティに住む思春期の皆に惡の華を咲かせるだろう。