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ザ・ライダーのYYamadaのレビュー・感想・評価

ザ・ライダー(2017年製作の映画)
3.6
~脱「勧善懲悪」の「新西部劇」~
【ネオ・ウェスタンのススメ】
『ザ・ライダー』(2017)

◆本作の舞台
 サウスダコタ州 / 現代

〈見処〉
①まるでドキュメンタリー、キャスト
 自身の体験を演じた、現在の西部劇
・『ザ・ライダー』は、2017年に製作された西部劇。
・本作の舞台はアメリカ中西部のサウスダコタ州。カウボーイの青年ブレイディは、事故で頭部に大怪我を負ってしまう。ロデオ復帰への捨てきれない思いと後遺症との間で葛藤しながら、自分の生きる意味を探し求めるブレイディだったが…(eiga.comより抜粋)。
・本作は、主演のブレイディ・ヤンドロウ自身がロデオ競技中の落馬によって頭部に重傷を負った実話をもとに脚本化。主人公のみならず、彼を取り巻く登場人物も、非俳優の本人たちを起用。
・無名の監督クロエ・ジャオと無名のキャストと製作した本作は、第70回カンヌ国際映画祭の監督週間でプレミア上映され、芸術映画賞を受賞。また、第53回全米映画批評家協会賞と第28回ゴッサム・インディペンデント映画賞にてそれぞれ作品賞。近年稀にみるインディペンデント作品の成功例となった。

②無名の監督「クロエ・ジャオ」
・本作が長編2作目の監督作品となった女性中国人映画製作者、クロエ・ジャオ。
・2015年、彼女が32歳のときにサウスダコタ州パインリッジ・インディアン居留地を舞台とした『Songs My Brothers Taught Me』にて監督デビュー、本作にて注目を浴びる。
・前作の成功で得た彼女の資金をもとに、わずか880万円で製作された本作は、前述のとおり数々の映画賞を席捲。一躍、若手女性監督の旗手として認知度を得る。
・翌2018年9月には、ディズニー傘下のマーベル・スタジオが本作の成功をもとに、MCUフェーズ4の重要作『The Eternals』の監督に大抜擢、2021年の公開を控えている。
・そして、次作品『ノマドランド』は、第93回アカデミー賞にて6部門にノミネートされ、作品賞、監督賞、主演女優賞の最多3部門を受賞。 クロエ・ジャオは非白人女性監督として初めての受賞者となった。いま最も注目を浴びている監督の1人である。

③結び…本作の見処は?
男性向きテーマながら、女性に評価が高そうな作風に仕上がっている。
◎: 広大な草原を巡る乗馬シーンを描いた風景映像がとにかく美しい。とくに、作中に複数登場する日の出・日没前後の「マジックアワー 」の薄明の画質は、女性監督ならではの暖かさを感じる。
○: 悪人は登場せず、淡々と進むストーリーは、本作と同じく、モデル人物自身に演技をさせた、クリント・イーストウッド監督の『15時17分、パリ行き』よりも自然体に仕上がっている。
○: 普段目にすることがない、馬の調教シーンが印象的に描かれている。
▲: 特段のドラマ性はないので、睡魔には注意。主人公の葛藤が強く感じられなかっはたのは、自分の理解度の低さだっはたかも。
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