140字プロレス鶴見辰吾ジラ

映画クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン ~失われたひろし~の140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

3.8
【カウンターパンチ】

今年のクレしん映画は
ひろしとみさえの新婚旅行!?
これは飛び道具か!?
予告を見たら…
「MAD MAX 怒りのデスロード」じゃねえか!?

今年のクレしん映画は飛び道具!?
今年のクレしん映画は…
“野原一家Re:Born”でした。

毎回思ってしまって申し訳ないというか、クレしん映画の呪縛なのが「オトナ帝国」なわけですが、この「オトナ帝国」で“ひろし”が日本人の理想の父親像の如きスターダムを駆け上がっていきます。それでは、みさえは?というと「ユメミーワールド」にてみさえの“母力”を抜群に見せつけるクライマックスを持ってきてくれました。ただそれでも、クレしん映画の構図としてひろし>みさえの力関係が続いていることは否めないこともあり、本作は完全に“みさえ特集”として進行させます。本当に今回のみさえはキュートです。キャラ萌えに振っている部分はありますが、例えばみさえの水着シーンもあれば、例えばみさのの風呂上りのシーン…明らかにエロスをもって描いてきていることもあり、攻めの姿勢が伺え、そして何より今年はしんのすけが映画なのにメインとして置かれません。トレジャーハンターのゲストキャラとワイワイやる担当および、要所でみさえのナイト役にシフトチェンジしてきます。

本作は野原一家の新婚旅行=RE:BORNステージと考えて、ひろし×みさえの出会いが野原一家の過去→現在→未来へと進行していく物語の奥行を描いています。「未来のミライ」や「エンドゲーム」と似ているかと思います。これは「オトナ帝国」でもあった過去→現在→未来への想いを馳せさせる作品の奥行性に似ていますし、ひろしとみさの間にある“愛”というものの不確かさを彼らが必死で抗う姿や何気ない「母は強し」という受け答えを会話の中に盛り込むことで、その愛は確かなのだと観客側のボディブローのように伝えてきます。みさえの何気ない気遣いが見られるシーンが多く、正直子どもウケはしなさそうですが、一緒に劇場を訪れた両親には直撃するような刺激要素を含んでいました。福山やMISIAの曲が掛かるところは驚きましたよ、ホント…

クライマックスはある種振り切った落としどころなわけですが、思いのほかテキトーに流されたので熱量指数は若干落ちますが、ここで熱量をリカバーする要素がひろしとみさの鼻血のシークエンスだったのではないでしょうか?キャラが鼻血を流すのは、「オトナ帝国」にてしんのすけが東京タワーを駆け上がるシーンが印象的なわけですが、おそらく鼻血=一生懸命というトリガーになっているのではないでしょうか?クライマックスのひろしとみさえの距離感の取り方は、ベストな演出でしたし正直TV放映版ではおそらく描かれないであろう劇場版のプレミア演出だったこともあり、今年はみさえ映画であり野原一家のREBORNステージとしてエモーショナルに投げつけられたモノだと感じました。思わず私も目頭熱くなりましたよ。“愛”という不確かさを確かに感じさせる純度の高い決心に心震えるクレしん映画となりました。