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死体が消えた夜のkuuのレビュー・感想・評価

死体が消えた夜(2018年製作の映画)
3.5
『死体が消えた夜』
原題 사라진 밤 The Vanished.
製作年2018年。上映時間101分。

殺したはずの奥さんの死体が忽然と消えた謎をめぐって繰り広げられる恐怖の一夜を描いた韓国産ミステリー。

事件を捜査する刑事を『殺人の追憶』のキム・サンギョンが演じるほか、奥さんを殺した大学教授を『背徳の王宮』のキム・ガンウ、大学教授の奥さんを『優しい嘘』のキム・ヒエが演じる。

大学教授のジンハンは、財閥の2世で大手製薬会社の会長を務める年上の奥さから物のように扱われることに不満を抱き、教え子の女子学生と不倫に走っていた。
しかし、その女子大生が妊娠したことで奥さんと別れなければならなくなった。
そのためには奥さんを殺すしかないと考えたジンハンは、証拠の残らない新薬を使い、妻を病死と見せかけて殺害することに成功。
幸福な未来を手にしたはずのジンハンだったが、そんな彼のもとに、奥さんの遺体が遺体安置所から忽然と姿を姿を消したという知らせが入り、ベテラン刑事のジュンシクから執拗な尋問を受けることになる。。。

今作品を観たとき、これがスペイン映画『ロスト・ボディ』(エル・クエルポThe Body/The Corpse.2012年)のリメイクだとは知らなかったけど、どうも既視感あるのは拭えなかった。
そこで、ググった結果、オリジナルを発見。
以前見てるわぁと納得。

今作品は、主に薄暗い屋内空間で物語は展開され、大半は国立科学捜査研究所内。
荒れた悪天候を背景に繰り広げられてる。
こないな様に行動空間を狭めることで、閉所恐怖症感が高まり、それが空間構成と移動式フレーミング効果(ある事柄を説明するにあたり、伝え方・表現を変えることで、相手に与える印象を変えられる)によって映し出されてました。
せやし、怖い。
カメラは暗い廊下を歩き、壁を登り、クローズ・ショットからロング・ショットへと頻繁に切り替わり、
さらに空撮を利用して、重要な要素である空の冷たい霊安室のロッカー、
廊下に倒れた女性の死体が衛兵の懐中電灯の光に照らされて消え、
遺族の旦那の偽りの涙に一瞬焦点を合わせて、幻惑し遠近感を狂わせる。 
話は自体はそないに怖ないのに、見てて怖い。
また、破天荒なポリスと旦那の恋人も簡単に紹介される。
このオープニングは、これから明らかにされる象徴と意義のあるイメージの枠の中で、一連の視覚的なつながりを設定するモンかな。
その後の展開は、韓国のリベンジ映画の必須条件である、トムとジェリーのパターンかな(窮鼠猫噛み、窮猫鼠を噛むかな)。
アイデンティティを構成するヒエラルキーにおける関係者の地位が、生きているときの力を死んだら否定してしまう。
そのため、女性の死体は、復讐に燃える幽霊の代用品として理解することができる。
幽霊が意味する抑圧の批判は、特に西洋のホラー映画における流用によって、ほとんど無意味なものとなってしまった。
ノワールやネオノワールは、基本的に男性向けのジャンルであることが多く、自己と他者の境界を消し去ることで、都市やモラルの衰退に対する不安を表現するものかな。
ノワールが一種の倫理的道徳を強化することになったのに対し、ネオノワールは曖昧な世界を維持し、善と悪の境界を崩壊させる。
今作品の建築を構成する荒涼としたダークブルーの脱色された空間では、誰もが罪を犯し、誰も無実ではないんちゃうかな。 
キム・サンギョンとキム・ガンウはそれぞれの役柄を巧く演じてたけど、限られた役割の中で際立っているのは、夫への愛によって最終的に死を迎える、騙された奥さんのユン・ソルヒ役のキム・ヒエかな。
キム・ヒエは、哀愁を漂わせ、それ故に個人的には共感できるキャラやったかな。
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