マッスル入道

The Strange Thing About the Johnsons(原題)のマッスル入道のネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

パパさん
穏やかで理解ある優しいパパさんの笑顔が,14年後にはすっかりと消え失せてしまったのが心にとても来る.パパさんは息子を糾弾できなかったんだろう.自分のせいで事態が招かれたのだという責任感と,息子は愛情からそんなことをしでかしたことが分かっていたから.ちゃんと息子を愛していたしね.でも耐えられなくなった.中途半端に息子を苦しめ続け,結局は彼を拒絶し,痛く傷つける結果となったんだ.どこかで息子をめちゃくちゃに怒っていれば,もう少しマシな結果になったかもしれない.というか性行為には同意が必要であると教えなかったのか?まぁ,パパさんもひどく戸惑ったんだろうな.
ママさん
パパさんと息子が怪しいことにいつから気付いていたんだろう.うっすら何か気付いていたかもしれない.怪しいなと思いつつも目をそらしていたのかもしれない.家族のことはそれなりに愛してきたのだとは思う.しかしやっと問題に目を向けて息子に放った言葉には愛や信頼などどこにもなかった.ママさんは一般的なよき妻だったのだとは思うが,ママさんはパパさんのことも息子さんのことも大して見ていやしなかったんだろう.息子さんはそれに気づいてたんだろう.そしてcold bitchとか呼んだんだろう.Cocoon Manを世に出せるかどうかは彼女にかかっていたわけだが,燃やしてしまった.読みもしなかったんじゃないかと思う.彼女はおそらく逃げたんだろうな.
息子さん
パパさんを深く愛していた.ただの父親というだけじゃなくて,親友だと言っていた.父親や親友とは性行為をしないのが一般的だと思うが…….彼は同じようにパパさんと愛し合えることを期待していたんだと思うが,パパさんは彼のことを怒るわけでもなく,拒絶することもなく(No!って叫んでたけどね?),彼の言う通り「何もしなかった」のだろう.パパさんが最初の時に「タブーじゃなくなったよ」といったのもあって想い合えると期待してたのに,パパさんの書いた本はそうじゃなかったんだろう.彼にとっては裏切られたように思えただろうな.
総合
誰が悪人!誰が原因!と特定の人間を悪役にすることができない内容となっている.「タブーとは何だろうか?」という問いかけが大きな主題だと思うが,もはやタブーの問題ではない気がする.普通に「息子よお前を愛しているがセックスはしたくない」と言えばよかったんじゃないかと思う.実はパパさんも息子さんと愛し合いたかったのだろうか?そうは全く見えなかったが……….
結局息子だけが自分の気持ちに向き合って正直に生きて,親たちはそれに対してひたすら受け身だった.なかったことみたいに振舞っていた.ああ、そういう意味でもタブーなのかな?一見すると息子だけが大きな問題を持っているように見えるけど,親たちにも非がある.
同性愛の話はいまやタブーではなくなりつつある.近親相姦は今もタブーだろう.なぜダメなのかという明確な理由はないと思う(近親相姦を自然と避けたくなるような遺伝的なあるいは文化的な傾向が形成されやすい気はする.それはそんなに不思議ではない.それは善悪とは関係ないが).
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