たにたに

草原の輝きのたにたにのレビュー・感想・評価

草原の輝き(1961年製作の映画)
3.8
【抑圧】2023年19本目

食料品店の娘ディーニーと石油成金の息子バッドの切ない青春物語。

2人は確かに愛し合っていたのだけれども、どちらも互いに両親の抑圧的な思想や考えに頭を悩ませていた。

ディーニーの母親は結婚するまで純潔を守りなさいと教え、バッドの父親は結婚の前にエール大学をしっかりと卒業して名誉を得ることを強制した。

高校生2人の思いや信念は、そんな親の教育や世間の目によって抑圧され、次第に2人の心は離れていってしまいます。

"やりたいこと"を目一杯やらせてあげる親は現代では多いように感じますが、一方で自分の過去を振り返って、子供に後悔のないように"やるべきこと"を教示する親も少なくありません。

それでうまくいく場面もあるかもしれませんし、子どもの一挙手一投足が親の責任であるという風潮が根付いていることもエゴに繋がっている原因と言えます。


互いの両親は結婚することには賛成なのですが、時期を見誤ることを恐れています。
しかし、若いうちはすぐにでも愛を形にしたいと思います。そのもどかしさが不安定さを生み出してしまう。

高校の授業で謳われるワーズワースの詩。

「草原の輝き 花の栄光 それらは再び還らずとも嘆くなかれ その奥に秘められたる力を見い出さん」

この詩はきっと、年齢を経るごとに気付く人生の素晴らしさと人間の可能性を提示しているように感じるのです。

高校生の時点でこれが理解できるのであれば、達観しすぎかもしれません。

あんなこともあったな、こんなこともあったな。と振り返ったときに感じる、やるせなさや切なさは、きっと人生にとって何かしら意義のあることなのです。

前を向いて次のステップへと歩んでいく。そんな力強さを感じる映画でした。
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