Same

HOMIE KEI チカーノになった日本人のSameのレビュー・感想・評価

3.6
アメリカのレベル5の極悪犯罪者が収監される刑務所に10年収監され、刑務所内でたった1人の日本人だったのに、メキシコ系ギャングのチカーノの一員となり刑務所中からリスペクトされるまでになった男のドキュメンタリー。
淡々と語る元ヤクザKEIさんの人間的魅力と怖さが存分に出てましたね。とても面白かったです。

以下ネタバレ












とにかく序盤のニヤニヤしながら回想するヤクザ時代のエピソードにドン引き。
食事中に襲撃されて、目の前でさっきまで一緒に食事していた人が食事の上に脳みそぶちまけるなんて、日本で起こったとは思えない事を淡々と語ってくれます。

個人的にはもう少し刑務所内でのエピソードを多めに聞きたかったなー。かなり長い間いた訳だし、人生を変えるような出来事があったというし。序盤の武勇伝的な刑務所内の話も聞きたかった。
チカーノ仲間ホーミー達に会いにアメリカに戻り、ギャングの垣根を超えて彼のためにパーティーが開かれたのは凄かったな。

後悔とか懺悔の気持ちから今の奉仕をしている訳ではない、過去が消える訳では無いと語っていましたね。彼自身まだ答えが出てない訳で、チカーノの強いファミリーの結束に心動かされたという家族愛を中心に、強引にまとめない編集がよかったな。
家族の結束に強く固執しながら、産みの母親に対しての態度、またその母親の言葉が強く記憶に残りました。

元ヤクザの牧師、元ヤクザの画家とかそういうストーリーで人を括って、本人もそれに乗っかってメディアに出てくるのを見るのが嫌いなので(分かりやすいパッケージで人を消費するメディアが嫌い)、後で漫画になっただのTVに出てるだの聞いて、あー、自己顕示欲が抑えられない元ヤンチャなありがちな中年だったのかと、少し残念な気持ちになりました。
そりゃこんなおもろい人生のオッサン、メディアがほっとかないと思うけど。
紹介してもらえないと知りようも無いけどね笑

刑務所内でのいつ死んでも構わないというその時を並々ならぬ覚悟で強く生きるという腹の括り方がかっこいいなと感じたので、引き際もバッチリわかってる人であって欲しかったなー、勝手な願望ですけど。
いくら今良いこと言っても過去に人の鼻や耳を削いでたんですよ?いや、さすがに無理でしょ。真っ当な人の道に戻れるラインってあると思うんですよ。

個人的には、『バガボンド』の宍戸梅軒が「殺し合いの螺旋から俺は降りる」とケジメをつけて、誰かのためだけに隠遁生活をする、あの生き様こそが元罪人のあるべきカッコいい姿かなと思うのです。
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