バルバワ

ジョジョ・ラビットのバルバワのレビュー・感想・評価

ジョジョ・ラビット(2019年製作の映画)
4.3
『リチャード・ジュエル』の後間髪入れずに今作を鑑賞しました。「サム・ロックウェル二連続!」(CV:渡哲也)というわけで、この日の隠れシネシタンはサム・ロックウェル漬けでしたよ!

壁の内側に自分だけの映画館を作りたいと切に願う…それが隠れシネシタンだッ!

いやぁ…僕は嫌だ!

あらすじは1940年代、10歳のジョジョはヒトラー青少年団に入団し、国と母親、そして妄想の友達ヒトラーを敵国やユダヤ人から守る強い男を目指していた。ある日、彼は自宅の壁の裏に隠れていたユダヤ人の少女エルサと出会う。…的な感じです。

冒頭からコメディ全開で笑わせてもらいました!ジョジョ達が参加するキャンプで教えていることのなんてバカらしいこと!大草原でなにやってんだ!しかし、俯瞰で観ていれば笑えるのですが、よくよく考えてみるとここのシーンって、10代の若者が国の為に戦地に送られる準備をさせられてるんですよね、銃や手榴弾をなげる練習をしているシーンは一見明るい場面に観えるのですが…背筋が冷たくなります。

今作は基本的にコメディなのですが、しっかりと戦争の悲惨さやナチスへの敵意が描かれており、そこも作り手の真摯な眼差しが垣間見れます。あとタイカ・ワイティティ監督自ら演じる妄想ヒトラーのアホらしさも最高です。監督はユダヤ人のハーフなので「これはヒトラーに対する最大の侮辱だぜ、イエーイ!」と発言っていました。イエーイ!

そんな惨い状況の中元気いっぱい懸命に生きるジョジョとそのお母さんを初めユダヤ人の少女エルサ、友達ランキング2位のヨーキーとのシーンは軒並み微笑ましいです。

中盤の自転車で帰還兵を乗せたトラックとお母さんと並走するシーン、エルサとの手紙のやりとり、ヨーキーとのハグ等々どれも素敵なシーンです。

今作は素敵なキャラクター(良しにつけ悪しにつけ)が多くてですね、ジョジョの優しいくせに悪ぶっている所やエルサの勝ち気な感じも非常に可愛いし、ナチスのふくよかな金髪女子の残虐性も少年に手榴弾を持たせて「米軍兵にハグしろ」という最悪の台詞で良く出てたし、やたら背の高いナチスの高官(因みにコイツが出てくるシーンはサスペンスとコメディが止まらなかった)の奇怪さも良かったです。

しかし個人的にはヨーキーが可愛くて仕方なかったです。ちょっとポッチャリしてドジで…愛しさが紙の軍服(ここのシーンも悲惨なのに笑える)を着て歩いている感じが癒しッ!

キャラクターの魅力を惜しみ無く体現している役者さんはすべからく好演されていて特にサム・ロックウェル演じるクレンツェンドルフ大尉が素晴らしい!彼の人間味溢れる人柄、佇まいに目が離せなかった…終盤、彼が自分を解き放ってからがもうビューティホー!

また今作はジョジョが靴ヒモをお母さんに結んでもらう姿が印象深く、これはまだ彼が外の世界に出る準備が一人で行えない、または母体にいたいという心理描写だと思います。
でも彼は靴ヒモが結べるんです。それが明らかになる中盤のある出来事、彼が靴ヒモを結ぶ相手…言葉が出ないです。誰かの靴ヒモを結んであげるという行為はその人を送り出すということなのかもしれませんね。

終盤、妄想ヒトラーが「あのユダヤ人の女を殺せ!」とジョジョに迫るシーンがあります。

勤め先の社長に「会社と妻のどっちを取る!?」と迫られたら間髪入れずに「くたばれ!」と啖呵を切って、社長を蹴り飛ばす男でありたいですね!←なんだこの締め
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