バルバワ

エスター ファースト・キルのバルバワのレビュー・感想・評価

4.4
この『エスター』という作品には個人的な思い入れがありまして…ズバリ主人公エスターの顔が妻によく似ているのです。

いやぁ、応援したくなる!

あらすじはこの少女だけが変なのではない!…的な感じです。

【頑張れ!エスター!】
さて、冒頭で書かせていただいた通り、妻がエスター、ひいては演じてらっしゃる俳優のイザベル・ファーマンに似ているということもあってか鑑賞中、彼女を応援している私がいました。前作では応援しようとは思わなかったのに…。

というのも前作がエスターという少女が何者かというところに物語の推進力を託していた作品だったので、エスターが殊更怖く不気味に演出されていたからです。また、物語の主軸がエスターではなく被害者家族、特に母親に置かれていたことにより、彼女を多く映す必要がなくその不気味さやミステリアスさが物語の最後まで持続していたのだと思われます。

対して今作はエスターが何者かを観客の大半が知っているということが前提の作品なので、必然的にエスターを物語の主軸に置かざるを得ず、パンフレットで映画評論家の氏家譲寿さんが寄稿していたレビューでも書かれておりましたが前作でのエスターの"不気味さ"が今作では"あぶなっかしさ"に転じている分、ある種の彼女が抱える悲哀をクロースアップしヒロイックに描いていました。

冒頭の精神病棟脱出もその後のとんでもな展開も彼女に感情移入とはいかなくても彼女の行動や取り巻く状況にハラハラさせられました。

【頑張れ!みんな!】

エスターを演じているイザベル・ファーマンさんは25歳、イザベルさんは声も表情、仕草で13年前の自身の演技を再現しようとしていますし、メイクで幼く観えるようにはしています。

しかし、小学生くらいのサイズであるエスターを演じるには体格的に無理が(イザベルさん本人は160cm)あるので、イザベルさんが膝歩きで身長を低く観せたり、周りのキャストに厚底ブーツを履かせたり、遠近法を使ったり、後ろ姿にはスタントの子役を配置したりと極力CGには頼らない方法で今作のエスターに説得力を持たそうとしていました。

冒頭の精神病棟の脱出シークエンスには前述した作り手の工夫(膝歩きや子役のスタントを使用)が詰まっており、しかもこんな様々な工夫が為されているシーンをワンカットでの撮影を行っています。

私はこの熱意が本当に胸を打たれました、作り手の皆さんは本気で今作を面白くしようとしているのですよ。

冒頭から作り手の皆さんの熱意を目の当たりにしたのでそこからは物語を追いながら「この1つの場面を成立させるためにはどれだけの努力を…!」些か穿った観方をしてしまいましたが、私はそれも今作の魅力だと思います!

すげぇよ!あんたら!

【最後に】
今作もどんでん返し展開があるものの、その前後の登場人物の反応や発言に微妙に違和感があり、場面によっては脚本が変わったような印象を受けたものの、それでもエスター以外の登場人物のさり気ない掘り下げやエスターの超絶嫌がらせなスムージー、恐怖の共同戦線など観どころは満載でした。

ポール・ヴァーホーヴェン監督作のような何が何でも生き残ってやる系の主人公が活躍する映画を観ているようだからこそ、前述した作り手の姿勢も含めたエスターの頑張りに思わず声を上げて応援したくなりました!

そして、帰って妻の顔を見て「この婦人、なんだか変だ」と言ってみたくなりました。
バルバワ

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