horahuki

悪霊館のhorahukiのレビュー・感想・評価

悪霊館(2018年製作の映画)
3.1
悪霊は天使の顔で現れる…

気弱で地味だった主人公アシュリーが悪魔さんに憑依されたせいで、ビッチ化&ドS化…そして爆食女王化!急にエロい服着て純情な幼馴染を誘惑したり、牧師とバトルしたりするオカルトホラー。

未体験ゾーン2019公開作です。
去年の未体験ゾーンでも『悪霊館 ダークネス・ライジング』ってタイトルの映画を公開してましたが、今年も同じようなタイトルをつけちゃうという謎。来年も悪霊館で攻めてほしいところ。

揺れる写真とそれに微かに映り込む影とか、画面端に現れ忍び寄ってくる影を映すことで危機感を盛り上げつつ、そのままカメラを横に移動させることで安堵へと急速に舵を切ったりとか、カメラのレンズ越しに対象を捉えることで肉眼とは違う何か別の物を感じ取ってしまうとことか、結構好きなシーンが多かったんだけど、大袈裟なBGMを合わせちゃう安直さにはガッカリ。

良く指摘されてる小学生がデザインしたみたいな二本角のなんか可愛い悪魔さんのビジュアルは私的にはお伽話っぽくて結構好き。それと恐怖シーンじゃないけど、棚越しに横にカメラを移動させながらの会話も好き。

幼い頃に母親が失踪し、父親は他の若い女と遊び放題で子どもには虐待の日々。そんな辛い時代を姉と乗り切ったアシュリーは母親の妹ターニャに引き取られ、姉は進学で遠くへ行きそれぞれの新しい人生をスタートさせてるのですが、母への想いが捨てきれず、心に抱える深い闇が魔の付け入る隙を生んでしまう。

そんな感じでオカルト映画の定番設定を採用しつつ、過去という心の牢獄からの解放に向かう手助けを担う未来を象徴する存在や、母親に隠された真実、同じ境遇の幼少期をすごしつつも遠くで暮らす姉等、一方向に向けた収束を期待させる要素をばら撒きつつも、定石を完全に無視したクライマックスは、良いのか悪いのかわかんないけど、私的には表面上の物語的な意外性を重視し過ぎた浅いものに感じてしまい、イマイチ響かず。。。

露骨な『エクソシスト』オマージュが後半で見られるのですが、オマージュしたせいで逆に本作の浅さが際立ってしまっているように感じて、ここも悪い方向に働いてしまっているように思いました。

でも悪魔にしつこく名前を聞くシーンは良かった。作中でも語られますが、「最もらしい名前をつけることが本質を見えなくする」わけで、本作の牧師がやってることはまさにアシュリーの心の闇に名前を与えようとする浅はかな行為。当然10年以上の長期間心の中で肥大化し続けた負の感情を表現するような言葉などあるはずもなく、本質を見失った形式や様式しか重視しない悪魔祓いというものを否定する。このあたりは確かに『エクソシスト』らしさなんだけど、なんだかな〜あんまりハマらなかった…。
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