とりん

クーリエ:最高機密の運び屋のとりんのレビュー・感想・評価

4.0
2021年79本目(映画館23本目)

これまでも米ソの冷戦時代を描いたスパイものは数多くあるが、CIAとかではなく経験が全くない民間人がスパイとして使われるという視点を描いたのは新鮮だった。
自ら望んでその道に行ったわけではないからこそ、家族にも話せず、いつ拘束されるか命を狙われるか分からないという状況に身を投じることで、精神をすり減らしていく様子がうまく描かれている。やがて家族に対して当たりが強くなったりするし、妻は夫が明らかに隠し事しているから、外で浮気をしているのではないかと疑ったりと、元の生活ですら少しずつ崩れ出してしまうのも心苦しい。
脅されるようにスパイになってしまったグレヴィルだけれど、同じく危険な状況に身を置いているペンコフスキーに対して情が生まれてくる。スパイにとって情を持つことはいけないことではあるけれど、彼は民間人。普段は冷静だけれど、こういう感情的なところもリアルだなと思った。
スパイサスペンスものではあるけれど、結構ドラマ性もあったかなと。
とにかくベネディクト・カンバーバッチの演技が素晴らしかった。特に後半に関しては身体を張りあそこまですり減った体当たりな彼の姿は初めて観た。久しぶりに映画館で彼を観たが、やはりスクリーン映えするなと改めて感じた。
こういう映画ってどうしても描いた側の国視点になりがちなのは仕方ないけれど、この時代ってどちらの国もスパイはたくさんいたと聞くし、あの仕打ちが特別ひどいというわけでもないだろう。きっとアメリカ側も同じ様なことしているし。
イギリス人だから愛国精神もないだろうし、脅されたとはいえ世界を救うために、あそこまで危険をおかしたり、体を張れるものじゃないだろう。
ド派手なスパイアクションも好きだけれど、こういうサスペンス要素のあるスパイものもやはり好みだな。ハラハラしたり、緊張感があったりするので、観るのに結構体力使ってしまうけど。
とりん

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