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フォードvsフェラーリのneroのレビュー・感想・評価

フォードvsフェラーリ(2019年製作の映画)
4.0
レース映画はやっぱりアガるなあ! 最新の技術で捉えられた高解像度の高速バトルの迫力はすごい。IMAX2Dで堪能! 欲を言えばユノディエールの直線(当時6km!)ベタ踏み加速描写をもっとぉぉ!!!

1960年代半ばのレースシーンは熱かった。フェラーリの優美、ポルシェの機能美、ジャガーの気品、そしてフォードの剛力・・・ 手探りのレギュレーションの中、個性豊かなマシンが覇を競っていた。少年雑誌でも多く取り上げられ、レースカーブームが燃え上がっていた。(個人的にはポルシェ派 特に906=Carrera 6が大好きだった) スーパーカーブームの10年ほど前のことだ。
そして66年のル・マン。フェラーリは330、ポルシェは906、映画でも何度か906の姿が見えて、ジジイはそれだけでもう感激。そしてそこに殴り込む、7リッターのモンスターフォードGT40。参戦わずか3年でフォードは123フィニッシュを果たし、以後フェラーリはF1へと活動のフィールドを移すことになった。金に物を言わせてもぎ取ったとはいえ、フォードGTMk.IIのあの大きく空けたエアインテークの獰猛なフェイスは新王者として非常に象徴的だった。ちなみに4-7位はポルシェ906だった<パチパチパチ>

本作は原題もフォード対フェラーリだが、内容はむしろフォードVSシェルビーとも言える。企業内のパワーゲームに翻弄されながらも、フォードの力を得て夢の実現へと驀進する男のドラマ。シェルビーはもう少し太めの年配をイメージしていたが、66年で43才だから意外に若かったんだね。演じるマット・デイモンが帽子を始めいかにもアメリカンな雰囲気を漂わせてそれっぽい。ケン・マイルズの名は知らなかったが、当時の写真を見てクリスチャン・ベールの変身ぶりにびっくり! イギリス人らしい偏屈さまで見せて実に良かった。

映画はマイルズの悲劇で幕を下ろす。史実をうまく取り込んでいて見ごたえはあったが、MkIからMkIIへの変更点とか、下面の抵抗問題とか、もう少しエンジニア寄りの視点も欲しかったかな。ACコブラの販売で苦労していたくらいしか見えないのはちょっと残念だった。この映画をフォードが容認したのならさすがに器がでかい。一歩間違えば株価下落じゃないのかと心配しちゃうぞ。

<閑話休題>
本作で描かれたフォード優勝の4年後、1970年のサルトサーキットで、スティーブ・マックイーンが趣味丸出しの「栄光のル・マン」を撮影することになる。マックイーンはガルフ=ポルシェで走ったが、フォードの撤退がもう少し遅かったら、フォードGTのマークいくつかを駆っていたのかもしれないね。ドラマ軽視で映画はコケたが、実はレースシーンの迫力ではコレが一番だと思う。なんたってすべて実写だもん。BDポチろうかな。
ル・マン24時間映画では「ミシェル・ヴァイヨン」もリアリズムとは別の地平に達していて嫌いじゃない。
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