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ゴーストランドの惨劇のSameのレビュー・感想・評価

ゴーストランドの惨劇(2018年製作の映画)
3.5
個人的にオールタイムベスト、今後これを超えるホラー映画なんて作り出せるのだろうかってくらい、どん底気分にさせてくれるホラー映画の最高傑作『マーターズ』を撮ったパスカル・ロジェ監督の最新作。
前作の『トールマン』同様、事前のネタバレ厳禁で是非ご覧ください。

というわけでレビューはネタバレで書きますので未見の方は回れ右してくださいね!














どんでん返し大好きなロジェ監督らしい映画でした!いやー面白かったなー。
個人的にはこの映画の仕掛け、キャンディトラックに乗った女装のハゲ&でっかいハゲの2人が引越し作業中に襲撃してきて、母が根性で撃退した所でうっすら感づいてしまい、その後の姉からの電話で分かってしまいました。
なのでびっくり出来なかったのは残念でしたけど、さすがよく練られた脚本です!

あまりの悲惨な現実から逃げ出し、小説家として大成し、『ゴーストランドの惨劇』が大ヒットしてベストセラー作家になり、夫も子供もいる優しい虚構世界に逃げ込んでいたベスが姉のヴェラの呼びかけで現実世界に戻り変態二人組に戦いを挑みます。
与えられてる食事が全部おやつなのがキャンディトラックに乗った変態らしくて好き。

序盤ではラブクラフトの模作のような同人小説を、わざわざタイプライターで書いていた厨二病丸出し(笑)なベスは、中盤でっかいハゲを殴りつける武器として、逃げたと見せかける囮としてタイプライターを投げ捨てます。
ラストで投げ捨てられたタイプライターと母親の幻影を見た後、救急車の中で救命士の問いかけに「書くのが好き」と言ったのは、空想の中に生きるのではなく現実世界で物語を綴る人間になるという決意表明のようでかっこいいですね。お前らバーチャル世界に引きこもってんじゃねえ!現実世界で戦え!っていうボンクラたちに向けたエールってのは深読みしすぎですね、妄想ですね笑

今作に対するインタビューの中でロジェ監督が語っていた「ホラー映画は安心してみられる物であってはいけない」というのはとても強く同意します。嫌悪感や絶望感を揺さぶってくる作品でないと存在してる意味がない。と言いながら安全なところから見世物小屋を覗く感覚のいやらしいB級ホラーも大好きですけどね。
でも本音で言えばロジェ監督みたいな本気のホラー作家さんにもっともっと頑張って欲しい。
そういう意味で今作は少々甘かったのでは?
いつもながら女優さんの顔をボコボコに殴って顔面がパンパンに腫れる演出(とくにヴェラの顔笑)はロジェ監督らしいなーと思いましたけど、この映画は結構希望の物語というか、子供が大人になる通過儀礼の物語を、壮大に残酷ホラーで描いた作品って感じがしました。
ベスがでっかいハゲに指を折られてバーナーで腕を焼かれなかったあたり優しいなーと思いましたよ。
生活のためにサクッと撮れる脚本を書いたってインタビューで言っていましたが、確かにコンパクトにまとまった短編とまではいかないけど中編映画ってところですか。

幽霊屋敷モノ、異形の変態家族、キャンディトラック、人形だらけの悪趣味な屋敷などなど過去の名作ホラーの美味しいとこ取りをしつつ、ロジェ監督らしい優しい精神世界と戦うどんでん返しホラーに仕上げたのは流石ですね。精神世界と現実を行き来する展開はハリウッドらしくなくて、日本人に馴染みのいいホラーに仕上がってました。
生活費稼ぐために撮ったにしてはかなりレベル高いです。ぜひこれを撮る前に2年も準備してたという『THE GIRL』の完成を楽しみに待ってます!!
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