茜

寄生体XXX/スキンウォーカーの茜のレビュー・感想・評価

3.5
オリジナルのポスターはすっごくかっこよくて魅力的なんだけど、案の定日本ではこんなクソダサい邦題と「スピーシーズ」もどきのデザインと的外れなキャッチコピーになってしまった。
実際の内容は全くもってこんなんじゃないし、もっと作り手側の気持ちを考えた仕事が出来んもんかね…映画好きとしてもイチ社会人としてもどうかと思うよ、これ。
こんな安っぽい印象の映画じゃなく、大人向けのしっとりしたボディホラーで、私の中ではなかなか心に響く秀作でした。

他人そのものを吸収しながら生き永らえる生物の哀しみ。
乗っ取られる側の恐怖を描いたホラーは数あれど、乗っ取る側の視点で描いた映画って数少ないと思うし、そこに孤独感や恋愛感情なんかを絡めるところが自分にとっては新鮮だった。
スカヨハ主演の「アンダー・ザ・スキン」って映画大好きなんだけど、本作はあれをもっと分かりやすくしたような印象。

他人を吸収しながら生きる謎の「生物」は、相手の肉体だけではなく記憶も一緒に受け継ぐ能力を持つ。
しかし肉体は時間の経過とともに傷んでしまうため、次々ととっかえひっかえしなければ生きていけない。
この乗っ取り生物がバーで出会った女性に恋をしたことにより、自分自身という存在に苦悩するという、切ないラブストーリーでもあり自分探しの物語でもある。
そもそも彼女に恋をしたきっかけも、他人に対する愛という感情を知るきっかけも「他者の記憶」っていうのも哀しいし、そのうえ肉体ですら他者から頂かないと生きていけないんだもんな。
いくら人間にとって恐ろしく得体のしれない存在とは言え、自分という存在に苦悩する「生物」の事を思うとこっちまで哀しい気持ちになってしまう。

味わい深いストーリーと構図の美しいカメラワークに加え、何より素晴らしかったのは終盤お目見えするSFX!
卵?繭?のようなものを突き破ってドロリと産まれ出る描写はCGIじゃ再現出来ない生々しさで、思いもよらぬところから興奮させられちゃって嬉しい。
どこか空虚な終わり方も何とも言えない余韻を残すし、ジャケ写で敬遠せずに観て欲しい一品。
茜