140字プロレス鶴見辰吾ジラ

フリーソロの140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

フリーソロ(2018年製作の映画)
4.2
【正しい資質】

断崖絶壁をロープなしで登り切る“フリーソロ“に人生を捧げている男のドキュメンタリー。失うモノのない無敵の人ではない彼は何故、垂直に聳え立つ崖“エル・キャピタン“に挑むのか?死を背後にして何を証明したいのか?

しかしながら逆説的にそれを言葉や形にしてしまえば、あまりに陳腐な感動になってしまうし、誰かに真似できる程度のことならば、それを目撃した我々の感動はニセモノになってしまう。

「正しい資質(ライトスタッフ)」の物語ではないだろうか?「ライトスタッフ」はアメリカの宇宙開発に携わったテストパイロットを追ったドキュメンタリー映画であるが、印象はそれに近いかもしれない。確実とまではいかないがかなり高い可能性をもって背後で牙を剥く“死“に対して乗りこえることで“生の実感“や“生の証明“、つまるところ“人生の価値の証明“を達成することで自分自身の資質の正しさを自他ともに認めされたいと思う者の話であると思う。死への恐怖は準備、練習の際に繰り返し描かれるが主人公のアレックスは8年越しでも諦めようとしない。彼の魂に宿った資質が彼を断崖絶壁の上へと寄り添う。“クレイジーな男の活劇“を見たのではなく、本当に純度の高い資質を持った男のドキュメンタリーだと思う。正気の沙汰ではないが紛れもなく真実で、多くのクライマーは命を落としながら彼がまだ生きていることは、映画の存在によって証明されている。自殺志願者の暴走でなく己の生きる理由や価値を常任の理解し得ないレベルの高純度で心に宿している彼に感動という形で見ている我々の低い心の純度を持ち合わせた罪悪感が解放されていく。

単に物語として見ればラスト20分の断崖絶壁への挑戦がすべてになってしまうが、彼の生い立ちが陰気であったことが、実は純度の高い資質を持つことになる理由になったのだろう。彼をクレイジーと思ってしまうのは、人類の科学技術が神を認識できるほどに成熟していないという論に似ている気がする。断崖絶壁を見ても、無理難題に直面してもそれを課題や命題として挑戦できる人の資質を我々の中の多くは認識できるほどに成熟していないとさえ思う。

他人から理解されるような人生なら誰かに真似られ純度の高い感動な熱狂は生み出せないと少々過激に考えてしまった。







あと私は絶壁ではなく巨乳が好きです。