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五億円のじんせいのchikichikiのレビュー・感想・評価

五億円のじんせい(2019年製作の映画)
3.6
 そもそもの着想と言いますか、着眼点が非常に面白い作品でしたし、何よりセンシティブな部分も含まれる題材ながら、重くなりすぎず、かと言って軽すぎない雰囲気や世界観はとっても良かったです!!


 そして、なんと言っても主演を務めた望月歩さんの演技が本作の主人公には非常マッチしておりました!!
(あと、単純に彼の声が私は好きです!笑)


 物語のとしては、かなりご都合主義なストーリー運びではありましたが、狭いコミュニティの中で守られていた主人公が外の世界へと飛び出し、今まで関わることのなかった他者やコミュニティ(社会)との関わり合いを通して、自らの価値を見つめ直していく物語としては、それなりに纏まっていたのかなと思います。
 
 また、ただの"良いお話"に着地するのではなく、主人公の様々な経験を通して描かれる要素が、メーンとなるテーマと絡み合う事で"複合的な問題"に対する投げかけとして考えさせられる部分がありました。

 本作の主人公は置かれた立場や状況こそ、一般的に見れば特異ではあるものの、"周りから求められる自分"と"内に抱えた本音(自分が思う自分らしさ)"との間に生じる矛盾。
 また、それらに縛られ、葛藤する様は10代の若者の心情としては非常に普遍的なもののように感じました。

 →だからこそ、彼の突発的な行動や、それに伴う二次的要素が与える変化及び、自己肯定感の高まりには非常に説得力があるように感じました!


 ただ… 小さな事柄1つ1つの奇跡的な積み重ねが主人公の変質を促すという、理屈抜きの心地よさが本作の魅力であると認識しつつも、やはり物語の展開としては「あと少し説得力があれば、もっといい作品になっただろうな。」と、個人的には思ってしまいました。
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