タケオ

スキャンダルのタケオのレビュー・感想・評価

スキャンダル(2019年製作の映画)
4.1
本作の原題『Bombshell』には、<爆弾>と<セクシーな女>という2つの意味がある。本作は全世界を騒然とさせた「FOXニュース」の会長兼CEOロジャー•エイルズのセクハラ騒動を描いた作品だが、絶対的な権力者に対して<美人キャスター>たちが勇気ある告発という名の<爆弾>をお見舞いした姿を比喩する最高に粋な題名だ。そもそもこの騒動が起こったのは2016年のことであり、つい最近の事件を会社も人物も全て'実名'のまま映画にしてしまうという本作の強固な姿勢には驚かされる。カズ•ヒロのメイクにより完全に'本人'と化した俳優陣の秀逸な演技からも、本作の確固たる信念がヒシヒシと伝わって来た。非道かつ異常なTV局内の実態には何度も胸を締めつけられたが、だからこそクライマックスには虐げられた者たちが牙を向くカタルシスが宿っている。奴隷衣装を着せられたレイア姫がジャバ•ザ•ハットを鎖で絞め殺したあの'映画的な興奮'すら蘇ってくるのだ。だが物語は、安易なハッピーエンドを迎えない。まだまだ彼女たちの戦いが続いていくことを示唆して映画は幕を引く。巨大な権力に立ち向かうものたちの姿を描いた本作は、まるで(牙を剥くのは被害者たちだが)21世紀の『大統領の陰謀』(76年)のようだ。
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