Jaya

PITY ある不幸な男のJayaのネタバレレビュー・内容・結末

PITY ある不幸な男(2018年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

妻が昏睡状態に陥って新たな快楽を覚えた弁護士のお話。犬のクッキー、絶対帰って来るはず!と思っていたら予想以上にいいとこで帰ってきて嬉しい。

弁護士のハマり方、演技が素晴らしかったです。感情を抑えに抑えたしかめっ面の中で、心の変容が細かく演じられていたように思います。また、それを実現する構図や撮影も素晴らしかったです。とにかくキレイでした。

妻の蘇生には驚きましたが、それを全く無駄にしない展開。いい年して気にかけてもらえる快感を忘れられなくなった弁護士。徐々にエスカレートというよりは少しずつ腹の裡が表面化するさまが見事でした。最後の表情も忘れられない。

冒頭に「いや涙出てないけど…」と思ったそのことが伏線になっているのも素晴らしい。振り返れば確かに全ての立ち居振る舞いに不自然さ。父との関係もやはり伏線だったのでしょうか?そして一貫してどこか諧謔をもって描き出される閉塞感も見事でした。

共感を抱いたり病的な心理状態を慮るようなところには落とし込まれてはいないのですが、自分で仕掛けたような感情の罠に囚われた弁護士をブラックな諧謔とともに描き出した名作でした。
Jaya

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