YACCO

浅田家!のYACCOのレビュー・感想・評価

浅田家!(2020年製作の映画)
4.0
中野量太監督の映画は公開すると必ず足を運ぶ。
「湯を沸かすほどの熱い愛」ではまった私としてはオリジナル脚本の映画も見てみたいところだが、最近は原作があるものの映画化が続いているようだ。しかしながら、どれも中野量太監督らしい映画になっているのではないだろうか。
今作のタイトルにもなっている浅田家は実在する家族とのこと。この家族、小説や漫画の世界に出てきそうな家族だ。もしかしたら、そんな風に描いているのかもしれないけれど。でも、とても良い家族だと思う。だから、あんな写真も撮れるのだ。映画の最後にモデルになった浅田家の写真が出た時、ああ、なるほど!と得心がいった。

今作は二宮くんが主役なのだが、見終わった時「これは浅田家が主役の映画なのだ」と思った。誰かが突出しているわけではなく、それぞれが心に残っているのだ。浅田家の両親も、妻夫木君演じる兄も。みんなで浅田家なのだ。その見せ方も個人的には心地よかった。

今作では311のことも描かれているし、みていて辛くなることも覚悟していたのだが、あの日の描き方も津波も被災地についても決して目をそらしたり、控えめにするのではなく、丁寧に見せてくれたと思う。
また、あんな風に写真を探して洗って返すといったような行われていたことは知らなかったし、紙の写真が持つ意味みたいなものを改めて感じてしまった。これからはきっと写真だったり手紙だったりといったものはどんどんデジタルの機器のなかに情報としてのみ存在するようになり、あんな風に残ったりはしないのだろう。(私ももうそうなってしまっていることを否めないわけだが…)

「家族」と一言でいっても、様々な人がいるようにいろいろな形がある。
でも、「家族」という単位をとても大切にし、そしてそれを楽しむこの家族の様は見ている側をくすりと笑わせてくれて、心を温めてくれるようだ。
人と人との距離が精神的にも肉体的にも離れざるを得ない今だから、余計にそんなことを思うのかもしれないけれど。
YACCO

YACCO