ケイスケ

幸福路のチーのケイスケのレビュー・感想・評価

幸福路のチー(2017年製作の映画)
3.9
アニメーションのクオリティが高く特に優れているのは、子どもの頃の空想や想像の描写がスムーズに現実世界に移り変わる演出。これが非常に素晴らしい。一見、主人公チーの現在と過去がリンクしていると思いきや…観続けていくと彼女の理想と現実が徐々にすれ違っていることに気付かされます。

台湾の田舎町で必死に勉強し、渡米して成功を収めた女性チー。ある日、祖母の訃報を受け故郷である幸福路へ久々に帰ってくる。子ども時代の懐かしい思い出を振り返りながら、自分自身の人生や家族の意味について思いをめぐらせるチーだったが…。

日本語吹替はチーを演じた安野希世乃さん、親友のベティを演じた高森奈津美さんが声がとても良く2人の掛け合いが楽しかった。そしてチーのおばあちゃんを演じたLiLiCoさんが本当に上手いですね。声質が、ちょっと不良感もあるけど優しいおばあちゃん役にピッタリです。

チーの少女時代パートはコメディタッチで描かれており、両親のキャラや舞台となる幸福路の下町感も相まって台湾版『ちびまる子ちゃん』を見ているかのよう。しかしチーが年を重ねるにつれ、理想や夢といったプレッシャーが彼女にのしかかり、チーが抱えている様々な悩みが明らかになっていきます。

全体的にはパステル調の柔らかいタッチでこの雰囲気が個人的に凄くツボでした。しかしそんな淡いカラーのイメージとは違い胸に刺さる内容というか。チーと同年代であれば絶対に共感できる部分があるはず。中盤以降はチーに感情移入しまくってるから「もういいんだ…もっと泣いていいんだよ…」と慰めたくなってくる。

ラスト、新しい生き方を見つけて幸せになれたように見えても人生は常に変化していく。生きていくことは大変で時には変化を受け入れなければいけませんが、その中でも新たな光を見つけて前へと進む…そんなメッセージを受けました。もしかしたら人によっては説明過多・説教くさく聞こえる部分もあるかもしれませんが、多くの人に観てほしい素敵な作品でした。