B5版

82年生まれ、キム・ジヨンのB5版のレビュー・感想・評価

82年生まれ、キム・ジヨン(2019年製作の映画)
2.8

巷に溢れている女性差別がよく描かれてる。
しかも男性諸君、これ蠱毒のように煮詰めてるわけじゃなくて女の日常にありふれた差別の話なんです。
割と手を入れずに常時この濃度でお送りされてるんです。
韓国は日本の兄弟分でもあり、男尊女卑社会と聞いていたが、女がゆえに受ける不利益の話をメインで映画一本つくると言う点では、韓国の方が遥かに先に進んでいるよね。

主人公ジヨンの憔悴、子育てへの問題の取り組みについて、夫婦の温度感の違いや、父親が無意識に持つ女を軽んじる態度のナチュラルな描写がうまい。
「え、そこから?」みたいな女達が絶望感を募らせていく過程や、子どもができた時の男と女の人生激変度合いの差をジヨンの服装で可視化してくるところも説得力のある描写だった。
作中、ジヨンの病気に対して夫がほとんど役にも立ってないところもきっと人によって感想が違うだろう。
おろおろしつつなんか頑張ってるみたいな描き方も、
もしこれ夫側が鬱病で妻が働いてるという設定なら妻の対応の評価は低いだろう、ということまでわかるのがまた憂鬱だ。
ママ虫、とふざける集団に女もいるように、男にも女にも女という属性を下に見る気持ちが知らず知らずのうちにあるのだ。

共感できるところが多かったけど、ただ映画としての完成度は低いかな…
原作読んでないですが、映画のラストは逃げだと感じました。
これが夫婦再生の話ならラストの流れにも納得がいきますが、この映画のメインはもっと大きな、ジヨンが今まで受けてきた差別が本流ですよね。
人生色々ある、でも世の中の流れは変えられないし、個人に言い返すことで多少スッキリはするし、できる範囲で自分を救おう。結論。
えっここまで見せておいて…?って感じ。

夫は育休もしたのか分からず結局何も身を削ってない、綺麗な場所から出てこない。
大きな社会的問題を挙げつつ、
結局は糸井重里的な「国を責めるな。じぶんのことをしろ」と小さくまとまった解釈に帰結させるとかちょっとがっかりです。
大体この主題の映画をみにくる人、はなから明るいラストなんか期待してないよ。
もっと脚本は練れたはず、良い映画になったはずだけどなぁ、とため息。
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