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TENET テネットのYYamadaのレビュー・感想・評価

TENET テネット(2020年製作の映画)
3.9
【監督クリストファー・ノーラン】
第11回監督作品

〈見処〉
①大いなるコンセプト映画
・『TENET』は「教義・信条」を差すが、前後どちらから読んでも同じ「回文」の意味をなすタイトル。
・本作は主演の(デンゼル・ワシントンの息子)ジョン・デイビッド・ワシントン演じる「名もなき男」による第三次世界大戦回避に向けた戦いを描く。
・本作は「時間の逆行」映像化に特化。『インターステラー』のような情緒的な要素は一切排除し、摩訶不思議な逆行描写を描くための壮大な「コンセプト映画」とみるべきだろう。
・とはいえ、時間の逆行の論拠を新しい物理学の法則「エントロピー」に基づき製作されている点は『インターステラー』の「時間軸は延伸する」の先にある作品といえる。

②ノーランらしさの演出
・本作を良く言えば「ノーラン作品の凝縮型」、辛辣な言い方では「特筆点がない平均点作品」だと思う。
・今回のウリである革新的な「通常時間と逆行時間の同一進行」描写は、まさに『メメント』の時系列を映像化したようだ。
・但しインパクトのある「逆行」演出も眼が慣れると「貞子」のようなバタバタ・モーションのように見えてくる。
・残念ではあるが、カーチェイスの逆行シーンやジャンボ機によるアクシデント・シーンも控え目で、予告以上の見処を見出だせず。
・作風が最も近い『インセプション』ほどの強烈なインパクトには至らない点も残念である。

③コロナ禍から映画界を救えるか?
・メジャー作品が軒並み公開延期するなか、9月の「閑散期」に上映する点は称賛に値する。まさに本年随一の「劇場の救世主」作品。
・また、本作はノーラン監督作の中でも有数の難解作品。何度も鑑賞しなければ、本作の全容は理解出来ない点は、一定のリピーターニーズもあるはず。
・但し「画期的な映像美に乏しい」「凡庸なストーリー」では過去数多の名作のように何度も鑑賞したい欲望にはならないだろう。
・自分には、過去のノーラン作品の実績から非常に期待値は高かったものの、鑑賞後には「深そうで浅い映画」に感じた。
・収益を考えれば、劇場公開ではなく、ネットでの定価公開のほうが儲かったのだろうな…と思えたが、皆さんは如何であっただろうか?
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