ヨーク

イソップの思うツボのヨークのレビュー・感想・評価

イソップの思うツボ(2019年製作の映画)
3.3
まだまだ記憶に新しい『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督が関わる新作。関わる、というのが微妙な言い方なのですが要するに単独監督作品ではなく3人の監督による共同作品ということです。脚本も3人の連名になっているようなので上田監督作品というよりはある種の企画ものという様相の方が強いのでしょうか、まぁその辺の細かい事情などは分かりませんが。
まぁ何にせよ作品の感想として端的に言うとそんなに面白くはないんですが、この映画つまんねえよの一言で済ましたくはない映画でもあります。ストーリーに関しては個人的に好きですね。とにかく今の状況を引っ繰り返していきながら物語が進むので、何を言ってもネタバレになってしまうような作品なのですが終わってみると物語としては割といいものではないかと思います。いやまぁ絶賛するほどではないんでその辺微妙なニュアンスではありますがお金と人を集めて撮影して映画館で流すには十分な質の脚本だとは思いますよ。しかし先に書いたように映画としてはそんなに面白くない。それはなぜかというと一言でいえば金がなかったからでしょう。もうね、画がしょぼいんですよ。ほぼ全編において映像がチープ。そしてその理由は演出とか脚本とか役者とかではなく単純に予算不足なんじゃないかと思います。
金さえあれば面白い映画を撮れるわけではないし金がなくても面白い映画は撮れると思う。『カメラを止めるな!』なんかは典型的な後者だったのですが、じゃあ少しでもいい映画を撮るために予算は多い方がいいのか少ない方がいいのかというとそんなもん議論の余地などなく多い方がいいに決まってるんですよ。『カメラを止めるな!』の実績は素晴らしいものですが同じことを2回3回とやれるわけはない。だってそれなりの予算がないと機材やら特殊効果やらCGやらの問題で物理的にどうしても撮れない映像とか出てきますからね。あと1カットだけなら誤魔化せる(アメリカン・スナイパーの赤ちゃんのように)かもだけど小道具のしょぼさとかもボディブローのように効いてきますから、その辺に割ける予算はあればあるほどいいに決まってる。
本作はもうその辺ズタズタでしたね。多少無理があるような荒唐無稽な展開でも映像の力でねじ伏せることは出来ると思うんですよ。人は良くも悪くも自分の目で見たものは信じちゃうところがあるので、例えば『マトリックス』なんて粗筋だけ読んだら結構しょうもない話だと思うんですよ。でもメチャ格好いいアクションシーンをガンガン入れてくるしキアヌがクソ格好いいので客は細かいところなんか無視して楽しむんですよね。でも映像がしょぼいと物語以外の部分でも粗ばかりが見えてくる。これもう実際に「見えて」いるのでどうしようもなくカバーできないんですよ。拳銃が玩具にしか見えないとかはそれなりにシリアスなシーンではやっぱ致命的ですよ…。多分監督たちも、これ映像的にキツイな…と思ってたと思うけど…。
とはいえ俺は『カメラを止めるな!』が面白かったが故に敢えてハードルを低くして観に行ったひねくれ者なのでそこまで失望したとかいうわけではないです。まぁこんなもんだろうという思いの方が強いです。それは予告編の時点で低予算臭が凄かったからということでもありますが、前作であんなヒットを飛ばした監督が関わる作品でも大して予算は下りないんだな…という世知辛い諦念のようなものも感じますね。そりゃあぽっと出の監督に湯水のように予算使わせてその挙句に大コケしましたよりはいいかもしんないけどさ、何かあんまり夢ないよなとも思いました。
あと亀、ウサギ、犬の3つの家庭の娘たちはそれぞれに個性的でみんなとても可愛かったです。
中々感想に困る映画だったんですけど、とりあえず予算規模に対してはまぁまぁ面白かった、まぁまぁ、くらいに締めておきましょう。最初に書いたけどつまんないの一言で終わらせたくはないっすね。
ヨーク

ヨーク