こうん

郊外の鳥たちのこうんのレビュー・感想・評価

郊外の鳥たち(2018年製作の映画)
4.3
ほんとは仮面ライダー観なきゃと思ってたけれども全然そんな気にならないので踵を返してイメフォで観てきました「郊外の鳥たち」。

ポスター観て「少年の顔がいいね」くらいの徒手空拳で臨んだら、いえーい超アート映画!久しぶりに脳をフル活動させて観ましたので糖分が欠乏中です。

東京渋谷はシアター・イメージフォーラム1館のみの上映ということで察せられますけど、わかりやすい物語も共感を寄せるキャラクターも興奮しかない展開も爆発もおっぱいもゾンビも出てこない、芸術映画でした。つまんない…ことは全然ない。

難解という事でもないんだけど、完全に映像言語のみで語り通したイメージの羅列としての映画で、こういう感想を書くことつまり言語化に難儀するタイプの映画であります。
だって確定的なことがあらすじ以上にないんだもん!

しかしそれは、フレームで切り取られる風景や繰り返されるキャメラの運動性や姿を変えて映し出されるモチーフや登場人物たちの表情や動きから、われわれ観客はなにかを読み取り、またはなにか無形の感情を喚起され、それをお土産として家路につく、という映画体験そのものなのであります。
映画にとって物語やキャラクターなど、いわゆるハリウッド型娯楽映画の作劇メソッドのものであって、そういった要素を極力排した本作に対して「映画芸術かくあるべき」とあくびを噛み殺しながら思いましたね。

なので私個人としては「なんだったのだろう…」と反芻しながら、心に残ったさまざまなディテールやその積み重なりから浮かび上がる抽象性に思いを巡らしながら、「あの映画この映画に似ているなぁ」と東アジアの映画作家のことを考えつつ、間違いなくスクリーンに映し出されていた移ろいゆく土地の記憶や感情を、自らのそれと重ね合わせ、郷愁に心をソフトタッチされた感じでなんとなくしんみりしています今。
最近実家がなくなって更地になったので、ことさらにキュン♡となりました。

この「郊外の鳥たち」が優れた映画だとすれば、どのあたりが優れているのか具体的にはわからんのですけど(苦笑)、心の琴線を奏でられたことは間違いないですし、なんならちょっと寝ちゃったんですけど(苦笑2)、リアルなディテールや演技演出に徹しながら時間や空間をシームレスに描くことで不思議な幻想世界を現出させているというのは面白かったし、それが映画の夢現的な性質と相まって、なにかをふんわりつかんだような把握の仕方ですけども素晴らしかったと思います。

覚醒しながら懐かしい夢を見たような気持ちで、好きですこの映画。

(“太っちょ”という呼称から相米の映画を思い出したりもしました、特に「ションベン・ライダー」あたり、子供たちの無邪気な遊戯性の自由さという点において)
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