B5版

はちどりのB5版のネタバレレビュー・内容・結末

はちどり(2018年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

1994年の韓国の空気は、日本でいうと1995年にあたるのでしょうか。

学歴に対する強迫観念が強まるなか、
何かに酔っぱらい潰れた叔父、
永遠に生きると思われた統治者の死、
壊れるはずのない大橋の崩落…
ある日千切れるように瓦解する社会を生きる少女。
この世界の終焉の糸口を、期せず掴んでしまったような透明な無力感を漂わせる寂寞としたパク・ジフの瞳が印象的だった。

主人公や周りの少女の感情の繊細な描写とノスタルジックな映像風景が相待った、ささやかな情景の色彩が美しい。
やり場のない鬱屈を収めきれずに暴れ狂う主人公のシーンは、身の内に爆発しそうな怒りや焦りを抱えていた少女の時の気持ちを思い出した。

「相識滿天下 知心能幾人」
知り合いはたくさんいるけど、その心を知っている人は何人いるだだろう?
触れた側から離れていく他者。
心を知る前から去っていく人々。
その繰り返しにゆっくりと擦り切れていた時に出会った人、心の柔らかな部分に触れてくれた人の死。
貰うはずだった言葉と段々紡ぐはずだった絆は永遠に失って。
ラストの主人公の表情になんとも言えない後味を感じた。

日本と韓国は精神の兄弟とも言われてるそう。たしかに盤上が危うく感じられるところが似ている気がする、そんなことを思った映画だった。
B5版

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