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燃ゆる女の肖像のknykeastのレビュー・感想・評価

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)
4.0
一つの肖像画を巡る物語。皆さんの高評価が気になり鑑賞してきました。

画家のマリアンヌは肖像画の制作を依頼され、とある孤島へ向かう。モデルのエロイーズは抗えない運命を抱え生きる喜びを失っていたが。。

肖像画に秘められた本質。

カメラでモデルを切り取る事ができる現代。肖像画とはいわゆるポートレート。しかしこの作品を見て、肖像画、美術作品を見る感覚が覆されました。

物語は非常に静かに、画家とモデルにフォーカスして進みます。鉛筆の音から感じる手触り感、薪の燃える音から伝わる暖かさ。五感を研ぎ澄まし、目を凝らし、耳を傾け、肌のぬくもりや匂いを感じ、全身で対象を感じる体験。

そこから浮かび上がる、マリアンヌの目から見たエロイーズ像。2人はお互いが納得のいく画を求めて、深く対話を重ねていく。

その違いを埋める作業はまさに、自分を理解して欲しいとお互いが願い、一体化していく過程でもありました。

一枚の肖像画でこれだけの背景を見せつけられると、芸術の奥深さを感じざるを得ません。絵心のない自分には遠い世界と思っていましたが、一つ視点が追加されました(^^)

表情の奥深さ。目元の傾き、口元、肌艶、微かな動き。画家マリアンヌの言葉を借りると、対象を理解する事は観察から始まる。日頃変化に無頓着な自分に反省ですね(^^)

芸術性の高い作品で、エンタメとは対極を成しますが、こらも映画の持つ表現力だと思います。気になる方は是非!
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