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ベイビー・ブローカーのknykeastのレビュー・感想・評価

ベイビー・ブローカー(2022年製作の映画)
4.2
ベイビー・ブローカー。何やらきな臭いタイトル。親のいない乳幼児の養子先を仲介し金銭を得るという、当然ながらの違法行為。

そんなタイトルとは真逆の、明るい家族をイメージさせるジャケ写が印象的。でも鑑賞後に改めて眺めると、とても感慨深いものがある。

代表作「万引き家族」など、一貫して家族について撮り続けてきた是枝裕和監督。今回は韓国を舞台に、一つの小さな命をめぐり、重厚かつシンプルな問いを投げかけてくる。

ある激しい雨の降る夜、「赤ちゃんポスト」に生後間もない赤ちゃんが置き去りにされる。赤ちゃんの名はウソン。「必ず迎えに来る」との母親からの手紙が添えられていた。

しかし、施設で保護されるはずの赤ちゃんは、施設職員を装うブローカーの手に渡ってしまう。。

ブローカーと赤ちゃん、そしてその母親も加わり、オンボロのワンボックスに乗り込み、一緒に養子先を探すというロードムービー的な脚本構成。

最初は敵意満載の激しい言葉のやりとりが続きますが、お互いの出自が明かされる中で、それぞれの登場人物の心情の変化が繊細に描かれていきます。

ブローカー役のサンヒョンを演じるのは韓国の至宝、ソン・ガンホ。その演技の安定感はもはや不動ですね(^^)

そして相棒役のドンスにはイケメン俳優、カン・ドンウォン。今回はかなり地味な役回りですが、後半になるに従い存在感が増していきます。

母親のソヨン(イ・ジウン)の表情の変化も見逃せません。ストレートで心に残るセリフも多く、ラストに向けては固唾を飲んで物語の行方を見守っている自分がいました。

韓国の養子事情としては、かつては国内のみならす、海外にも多く流出していたという事実があるようです。日本でも河瀬直美監督の「朝が来る」で特別養子縁組が取り上げられていた事も記憶に新しいですね。

最愛の子供を手離すという事。追い込まれてその選択をせざるを得なかった母親を思うと胸が潰れます。。その背景に潜むのは貧困の連鎖。問題を生む社会にこそ目を向けるべきであり、命に平等に寄り添う社会であって欲しいと切に願います。
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