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燃ゆる女の肖像のKKMXのネタバレレビュー・内容・結末

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

 非常に評価の高い作品で、さすがの傑作だと思いましたが、どうしてもハマるには至らなかったガーエーでした。
 すごく美しい作品で、いろいろ感じることができたのですが、まぁね〜、マリアンヌがすごく嫌いなんですよ、俺は。


 本作はミラノの貴族の元に嫁ぐ貴族の娘エロイーズと、その肖像画を描く女流画家のマリアンヌの悲恋話です。肖像画を描く5日くらいの限られた時間で燃え上がった恋を描いております。

 途中で、有名なオルフェのエピソードを登場人物3人が語り合うシーンがありました。そのエピソードとは以下。
(一部誇張アリ)
 詩人オルフェは亡くなった妻を取り戻しに冥界に行きます。そして冥王ハデスから、地上に出るまで振り返るな、とオルフェに釘を刺します。しかし、オルフェは地上に出る直前で振り返ってしまうのです。そして、妻は裕也とボン・スコットが待ち構える冥界にハイウェイ・トゥ・ヘル!となってしまう…というものです。

 侍女ソフィアは振り返ることに憤りますが、エロイーズは、むしろそれは愛ゆえの衝動だ、と新しい意味付けをするんですよね。これはめっちゃグッと来ました。
 が、マリアンヌは「詩人だから」みたいなことを言うんですよ。思い出が云々とか。

 エロイーズとマリアンヌのオルフェの解釈は、結ばれないという帰結は一緒なんですが、意味合いが違う。エロイーズは、好きだから、愛しているからこその行為が振り返りなんですよ。つまり、エロイーズの思いはマリアンヌに向いている。ハッピーエンドにはならないが、好きだから見てしまうし、見てほしい、という思いは、結ばれない愛を生きているエロイーズの心の叫びですよね。
 しかし、マリアンヌの解釈は自分に帰結させているんですよね。詩人とか思い出とかって、自分に向いているように感じられました。

 この激しい恋の物語で、実は互いが決定的にすれ違っているところに凄みがあるし悲しみもあるし、そしてあのラストシーンの残酷さが効いてくるんですが、マリアンヌの成長を感じることができず、そこが人類の進化に重きを置く自分の好みには合わなかったかな。

 エロイーズはマリアンヌを見つめ、愛し、その結果もう振り返らなくなり、すなわちそれは自分の中でマリアンヌへの想いを抱えて生きるようになったと思われますが、マリアンヌは自分の中のエロイーズ、燃ゆる女ではなく燃ゆる女の肖像を愛したのだと思います。マリアンヌが見つめていたのは、エロイーズの幻。だから、彼女はエロイーズとの恋から卒業できず、永遠にエロイーズを追い求めるのでは、と感じました。

 その感じが好みでなくてハマんなかったのですが、すげえガーエーではあったと思います。
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