櫻

家族を想うときの櫻のレビュー・感想・評価

家族を想うとき(2019年製作の映画)
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いつか見てみたいと話した景色のために、大切な人との時間も自らの身も削って、歯を食いしばって勤めても、かえってそこから遠くなっていくのはなぜなのだろう。ばらばらになりそうなのを必死で両手で引き留めて、支え合ってその円を保とうとしていた彼ら。便利さの光に隠されていく理不尽はそこここに散らばっている。頑張れって言葉があまり好きになれないのは、そのほとんどがもうすでに頑張っている人に与えられるものだから。まだ足りない、まだやれる、まだ諦めてはならない、と無責任に継続を願う言葉に感じられるから。走っても走ってもまだ足りないのなら、あとは何をすればいい?そのための力も時間もないのなら、私たちは何に向かって生きていけばいい?この作品が実際にあったある配達員をしていた彼の死をもとにしたことを聞き、このラストの続きが同じでないことを祈ることしか今はできない。けして素晴らしいとは言えない現実を、これからどう生きていくのか。このままだと崩れていくだけだ、君たち関係ないなんて言わせない、と突きつけられる。わかってたけど、頭を抱えるしかできない私は無力だな。
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