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マイリトルゴートのhorahukiのレビュー・感想・評価

マイリトルゴート(2018年製作の映画)
4.2
素晴らしい短編ホラー!

狼に怯えて森の中の小屋で暮らすお母さんヤギと子ヤギたち。ある日狼に子ヤギたちが食べられてしまったので、お母さんヤギが狼の腹を裂いて救出。でも長男のトルクだけ見つからない…。悲しんでいると、突然トルクが帰ってくる。でも何か以前と違うように思えて子ヤギたちが「本当にトルクなの?」と詰め寄るが…。

『crying bitch』は見たのにdigicon6でグランプリを獲得したこちらはスルーしてしまって後悔してたやつ!期待してた以上に大好きなやつだった!

フェルトなのか何なのかわからないけれど、ちっこいヤギたちのフワフワな質感がまず可愛い!でも描かれることはかなり残酷でそのギャップがたまらんかった。ちなみにジャケ画像になっているシーンは裂かれた狼の腹の中から視点です…😱

比喩としての「狼」と文字通りの狼のリンク。そして結局はその両方が比喩でもある。華麗でスムーズな主体の変更が見事で、フワフワな質感のファンタジックなアニメーションが作り出す雰囲気が子どものイマジネーションによる抵抗としての雰囲気を醸し出しており、そこからも主体の変更に対して自覚をもって選択された技法であることがわかる。そして狼としてのリンクは「犠牲となる子ども」という変えられない現実に対する厭世的な視点までも浮かび上がらせ、それが人の本質の炙り出しに繋がることで更なる強烈な余韻を残す。

描かれる内容を一義的に定めつつも、そこを起点に程よい配分で各方面にさりげなくベクトルを伸ばすアプローチが的確。そのことが表面からだけではなく内面からもファンタジーの空気感を後押しすることに繋がっていて、隠れ蓑的というか、主張のゴリ押しを控えた(ように感じさせる)謙虚さになっていてすごく好き。ヤギ→生身→狼と深部へと手を伸ばす三段活用も取り入れ、一見するとハッピーにも思える再度「着る」という行為にどこか病的な退廃感も滲み出させ、それが根幹的メッセージとなる流れがうますぎる!
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