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0.0MHzの消費者のレビュー・感想・評価

0.0MHz(2018年製作の映画)
3.7
・ジャンル
心霊ホラー

・あらすじ
幼馴染で同じ大学に通うソヒとサンヨプの2人はとある風変わりなサークルへ共に入った
霊を呼ぶという周波数にちなんで“0.0MHz”と名付けられた彼らの活動内容は心霊現象の検証
新入部員となった2人は早速先輩達と共におぞましい事件の起きた村、ウハ里で合宿を行う事となる
一行が現地へ到着すると早々にただならぬ気配を感じるソヒ
霊媒師の家系の娘である彼女は人一倍、霊に敏感だった為だ
そんな彼女を尻目に準備は淡々と進んでいき、いよいよ検証の時を迎える
内容は女性部員、ユンジョンを被験者とし儀式を行なった上で脳波や映像、ラジオ等を通じ変化を観察するという物だった
しばらくは何も起こらず実験は空振りに見えたがやがてユンジョンの脳波が0.0MHzとなった瞬間、少しずつ彼女に異変が発生
その末に彼女は廃屋の軒下へと何者かに引き摺り込まれてしまう
彼女をさらった物の姿は目撃者である学生の絵と酷似しており霊障も頻発
幸いユンジョンはテスとサンヨプに救い出され病院へと運ばれ、間も無く意識も回復し全てが解決したかに思われた
だがふと一同は気付く
部員のハンソクはどこにいるのか?と
それでも事を重く見ていなかった彼らだったが後にハンソクは変死体として発見され、テスもまた事故で死亡
それらの犯人は悪霊に憑かれたユンジョンである事が判明する
惨劇を受けてソヒとサンヨプは彼女を助けようと廃屋に戻り霊を引きずり出すべく儀式を執り行うのだが…

・感想
池袋HUMAXシネマズで開催された韓国ホラー特集イベント「絶叫!コンポヨンファフェスティバル2022」にて日本初公開された5作の内の1本である作品
共に主人公である霊媒師の血を引くソヒをApinkのチョン・ウンジ、彼女に好意を寄せる幼馴染のサンヨプをINFINITEのイ・ソニョルが演じている

韓国ホラーは「コンジアム」を除いてあまり評判が芳しくなく、それを覚悟した上で観たけど思ったよりは悪くない作品だった
レム睡眠下で脳の周波数が0.0MHzになると霊を呼び出せる、という設定がまず面白いし舞台となる村の廃屋もちゃんと薄気味悪い
クライマックスで真の姿を現す悪霊のビジュアルもホラー慣れしている身なので怖くはないけどしっかりと邪悪で良かった

惜しかった点は主に2つ
後に悪霊と戦う事になるソヒの感情の起伏が冷淡な人柄に似付かわしくない激しさで恐怖にのめり込みにくかった点
サークルの華、ユンジョンを巡り彼女の恋人であるテスにハンソクが向ける憎しみが十分に描かれていなかった点
特に後者はもっと突っ込んで描けばそれなりに胸糞展開を生み出せただろうに…

それらが大きな問題点で細かい違和感は更にある
霊障を感じ取り一度は恐怖に呑まれていたソヒが自らの血筋を受け止め決意してからとはいえユンジョンを救う儀式での態度が平常心な上に荒っぽすぎた
覚悟を決めての行動なんだからもう少し心の揺れを描いても良かったんじゃないかと
そもそも血筋をもっと重荷として描いて欲しかったというのもあるし…

そしてサンヨプを自殺に導こうとした幼少期に事故死した兄の亡霊の存在
これについてもあっさりと解決されてしまうし、最後の儀式で悪霊が幻覚としてその姿を利用するシーン以外には活かされておらず正直不要に感じた

結局、あれこれと要素を詰め込んだ割にはどれも大して上手く回収されずそのままクライマックスになだれ込んだという印象で設定や映像は悪くないだけに勿体無い作品という感じ
ただ一件落着と見せかけロマンスに転じるかと思いきや一転してバッドエンドを迎える、というラストは好き
何かとロマンス要素を入れたがる韓国作品だからこその上手い裏切りだったと思う

イベントで公開された作品は全て観る予定なので他にもっとエグい物がある事を期待したい
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