平野レミゼラブル

フリー・ガイの平野レミゼラブルのレビュー・感想・評価

フリー・ガイ(2021年製作の映画)
3.7
【Lv.1モブキャラからLv.999ヒーローに成り上がれ!!!!】
ゲームキャラに寝取られるって何???(寝てから言え)

というわけで、俺ちゃんことライアン・レイノルズがGTAめいたオープンワールドゲームのモブキャラに扮した期待作が幾度の延期を経て遂に公開ですよ!!
ライアン・レイノルズとっ捕まえてモブキャラ扱いとかどういう了見だ!?とは思うのですが、このブルー・シャツ・ガイ、マジでモブキャラとして大勢の中に埋没していくオーラの無さなのでビビる。
そんな彼がひょんなことからゲーム世界の主人公側に回り、とある女性プレイヤーと協力しながら世界の真実に触れたり、現実の悪者に反撃するために自立的に動き回る!!という内容になっています。
感覚は、ある日自分が小説内の人物だと知覚してしまう『主人公は僕だった』に近いでしょうか。もうちょいメジャーな映画で例えるなら、まあまんまゲーム版『トゥルーマン・ショー』ですね。

と、そんな感じに類似した先発の作品は結構あるので、存外突飛な設定というワケではないです。ゲーム世界設定ではないですが、一度死んでもリスポンしてやり直せるという点では今年でも『コンティニュー』がありましたし。
そのため、ガイが自我を持つ経緯だったり、自分がいるのがゲーム世界と理解して絶望してからの立ち直りに関しても割と既定路線って印象は強めに感じました。先の展開とかは読みやすいし、実際に読み通りに進んでしまって拍子抜けする場面もしばしば。

ただ、この作中ゲーム『フリー・シティ』の世界観は凝りまくってまして、ストーリーを追いながらゲーム画面を堪能するだけで十分楽しいのです。本作、パンフレットが作成されていないのが惜しいくらいに、細かい設定とかキャラクターを知りたいという欲求に駆られてしまいます。
劇中で『フリー・シティ』に技術を盗用されたとして、調査に赴くミリー&キーズが当初開発しようとしていた『自立思考で成長するモブAIを眺めて楽しむゲーム』は「売れるわけがない」として却下されていましたが、映画を観ていると「そんなワケないだろ!売れるよ!」と思ってしまいますね。却下した社長のタイカ・ワイティティ監督もといアントワンの見る目の無さったるや。

そして、ライアン・レイノルズをはじめとしてゲーム内モブキャラを演じる俳優たちのゲーム内モブキャラ演技が巧くて驚く。全員まばたきを必要最小限に留めて非人間感が凄いですし、手の動かし方も必要最小限なので本当ゲーム画面っぽい。
以前『龍が如く』のようなゲーム画面を再現するパントマイムが話題になりましたが、あれみたいな感じですね。まあ、あそこまで再現度高くないというか、極端ってわけではないですけども。


【参考:【実写版】ゲームあるあるグランドセフト如くソリッド 渋谷篇チャプター1/ Video game moments in real life Shibuya story】
https://youtu.be/AF-IR-caZC8

改めて見てもこの動画凄いな……普通にハリウッド超えじゃん……


それでも背景に目を凝らすと、なんか角に執拗にジャンプを繰り返して壁抜けグリッジを試みてる奴がいたり、敵を倒して屈伸煽りしているプレイヤーがいたりでかなりゲームあるあるネタを豊富に仕込んでいるので飽きることがないし、しっかりゲームっぽいのです。
むしろ、現実世界から見たゲーム世界のグラフィッククオリティがいやに低いことの方が気になります……公式CMでもクソ広告ゲーム筆頭の『マフィア・シティ』をパロったヤツやってましたが、本編のグラフィックが『マフィア・シティ』そのものだったんだもんな……まあ、ゲーム画面ってこと強調するためでもあるんで仕方ないとも思うんですが。

【マフィア・シティのクソ広告パロCM。『アオラレ』のCMは木曜洋画劇場の残党が作った質感でとても良かったけど、本作はTLに潜む胡乱なヲタクが作ったような質感でやはりとても良いです】
https://youtu.be/lVpbhSnwziI

あと『レディ・プレイヤー1』ほどではないんですが、版権ネタも結構豊富に取り込んでいたのが楽しい。特にディズニー傘下だからこそ出来る後半のネタの畳み掛けには思わず爆笑。ムキムキのライアン・レイノルズにも爆笑。一瞬だけ出るクリエヴァにも爆笑。
なんか合法的な無法地帯と化していて、一連の場面は特にお気に入りですね。
でも平然と日本からロックバスターまで輸入していましたが、エンドロールのどこにもCAPCOMの表記が無かったのは流石に自分の見落としと思いたい……いや、無許可ってこたァないとは思いますが、少なくとも劇中のタイカ・ワイティティ社長はあの辺の版権ガン無視して組み込んでそうなんだよな……典型的な炎上系社長だし、詫び石寄越せどころじゃないプログラム修正(物理)してくるし……

物語としても既定路線とはいえ、モブキャラとしてルーティンを繰り返すだけの存在だったガイが、次第にそこから外れて喜びを見出していく流れや、ガイから同じようにモブ脱却を誘われるけどそこから一歩踏み外す勇気を持てなかった友人バディの見せる漢気など結構グッと来るところもあったりで、中々巧くまとまっていました。
あと本作、スースクと同じく正しい意味での豪華吹替陣だけど(情報によると一言喋るクリエヴァの為だけに中村悠一も引っ張ってきたとか)字幕での鑑賞をオススメします。いやそりゃ吹替もスゲェー良さそうなんだけど、字幕ありきのキレキレギャグの破壊力が凄いんだよ!これは流石に吹替よりも字幕で見た方が衝撃は強いと思うんで是非に。でも子安ボイスのワイティティ監督は聞きたい気持ちもあるんだよな……

まあ、個人的にはもっとゲームキャラに欲情したりとかどんどん倒錯的な方向に進んでくれたら面白いかなァとも思ったんですが、その辺は結構無難なところに落ち着いたんでそこは残念ですかね。
いや、現実・ゲーム両面で凄く綺麗にオチがついてシンクロしたからこれで良いと100%満足はしたのですけれども!!

オススメ!