シズヲ

女囚701号 さそりのシズヲのレビュー・感想・評価

女囚701号 さそり(1972年製作の映画)
4.1
恐るべき衝撃。復讐を望む女が放り込まれた刑務所の息苦しい環境が、とにかく奇怪な熱量によって描かれる。陰湿さと低俗さに溢れ返った「やりすぎ」な世界観はいっそ癖になるし、過剰なまでに劇的すぎる演出が更に強烈な印象を与えてくる。一歩間違えばシュールなだけの作品になりかねないのに、梶芽衣子の圧倒的な凄みが映画全体を引き締めているんだよな。力強い眼力が生む鋭い美しさにとにかく惹かれるし、ごく僅かな台詞しか発しない寡黙なキャラクター性も独特の威圧感を作り出している。終盤の黒尽くめの衣装は最高にクールだし、溜まりに溜まった恨みが炸裂するカタルシスも抜群だ。

復讐劇ではあるけど、刑務所内での陰湿な生活が話の大半を占めるので中々本筋に移行しないきらいはある。ツッコミ所じみた勢い任せの場面は少なくないし、古臭さを感じる描写なんかも流石に多い。それでも異様にギラついた魅力を放っているんだよな。インパクト抜群の絵面を幾度となく叩き付けられるし、とことん記憶に残る作品として君臨している。陰湿であっても描写自体はマンガ的なのも猥雑なエンタメ性に繋がっていて好感。現代ではまず見られないようなパワーに溢れている恐ろしい映画だ。
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