にくそん

糸のにくそんのネタバレレビュー・内容・結末

(2020年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

あまりに有名な曲だし、人と人との絆を礼賛する詞なので、それを題材に映画っていうと、つい斜めに見たい気分も出ちゃうけど、これはまったく、バカにしたもんじゃないなと思った。いい歌じゃん。そして、いいお話じゃん。

中学生の二人が警察や葵の両親に引き裂かれるシーンで中島みゆきが流れたときは、金八先生第2シリーズを想起したけど(笑)。漣の少年時代を演じた南出凌嘉くん、かわいいなー。葵役の植原星空ちゃんは大人っぽい。中学生の男子と女子ってこんな感じだよね。

この中学時代を経ているので、大人になって、呼び名が「ちゃん」付けから呼び捨てに変わっても、しゃべり方は「ごめんな」じゃなくて「ごめんね」だったり、どこかにいたいけだった頃の名残りがあるのがかわいい。この菅田さんかわいい。この小松さんは凛々しかった。

榮倉さんが病室のベッドで横になっている姿、布団に盛り上がりがなくてぺったんこで、ぞわっとする。徹底した役作り。お芝居も素敵だった。二階堂さんは岩手の実家で被災して7年経っても精神的に立ち直れていないという役どころを、「友情出演」でやってのけていた。友情出演って、こんなにこんなだっけ。やばいな、いい意味で。

ドングリをぶつけてくる桐野家、「行けよ」と漣の背中を押す桐野家(最後は娘が「行けよ」という言葉にはしないまでも、実質それが漣には聞こえた感じかな)、「泣いている人がいたら抱きしめてあげなさい」、「大丈夫?」という言葉などで、時間と時間、シーンとシーン、人物と人物をつなぎ合わせていて、「糸」らしい演出だと思った。

各時制のシーンの終わりを意図的に早めに切っていて、最後、漣が葵を必死で探すシーンで一挙に見せる演出がすごく効いてた。「半沢直樹」とかでも多用される手法だけど。

結婚式は台本がほとんどなさそうだったな。死に別れた元妻の両親を呼んでいるのが優しくていい。そして、元妻の父を演じた永島敏行さんが涙されていた気がする。少ない出番で、こんなに実在感のある演技ができるものなんだ。そのお仕事ぶりにも感動した。
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