YACCO

リスペクトのYACCOのレビュー・感想・評価

リスペクト(2021年製作の映画)
3.5
上映時間が2時間半と聞き、最初は長いかなと思ったけれど見終わった時は映画の尺ではアレサ・フランクリンという女性の生涯を描くには時間が足りなかったなと思った。

晩年のアレサの姿をTV越しで見たのは、オバマの大統領就任式だったろうか。
さすがにリアルタイムで彼女の姿を見たり、歌を聴いていたわけではなかったが、彼女の歌は聴いていた。
彼女の人生は本当に栄光と苦難の連続であったことは間違いない。
しかし、彼女の歌がソウルミュージックを世界へ届け、日本という国の田舎に生まれた私のようなもののところにまで、距離と時間を超えてその声が届いたことからも、彼女の歌声の偉大さは感じられると思う。(映画のなかで、ファンの女性から「あなたの歌は私のことを歌ってくれているようだ」と言われるシーンがあったけれど、私にもそれがすごくよくわかる)劇中、最初は黒人であることで軽視されるが、曲を作っていく過程でひとつになっていくシーンがあるのだが、それくらい彼女の歌は人の心を惹きつけるものだったのだろう。彼女は歌でメッセージを伝えて、その歌声で人を魅了してきたのだと思う。

彼女の人生には本当に色々なことがあり、今作ではぼかして描かれていたように思うけれど、12歳と15歳での出産や、夫テッドからのDVなど、それだけでもひとつの物語が生まれそうなのだが、彼女は、人権活動家として公民権運動やウーマンリブ運動にも深く関わった。(マーティン・ルーサー・キング・ジュニアとの交流なども今作では描かれている)それが、晩年彼女がケネディ・センター名誉賞やピューリッツア賞といった多くの賞を受賞することに繋がっていくのだろう。
本当にアレサの生涯は栄光と苦難の連続で2時間半という映画の尺のなかで、彼女の歌も散りばめながら見せるには、いささか時間が足りず、いろいろ詰め込んだようにも思えたが、それでも彼女の代表的な歌も聞かせつつ、アレサの生涯をみせてくれたと思う。

ラスト、晩年のアレサ本人が歌う姿を見た時、胸にグッとくるものがあった。アレサ本人の歌声が一番心に響いたと言ったら、この映画に失礼になるのかもしれないが。
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