140字プロレス鶴見辰吾ジラ

フラグタイムの140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

フラグタイム(2019年製作の映画)
3.8
【フラッシュ】

コミュニケーション不良の少女の逃避の象徴としての時間停止空間。その中で下着を見てしまったことから始まる空間内の秘密の共有。俗に言う百合モノであり百合モノなのだが、秘密を共有することは他者との接点であり共有への欲望。60分内に納めるにはいささか駆け足なドラマ転換だが、普通のことを普通にできない焦燥がメタファーという下着に彩られる空間は素直に好き。ヒロインが部活に入らないなどプチ「タクシードライバー」的な接点不良はあれど、対して憧れた人にも狂気があるのが現代社会のプチ病か?本当の病か?

水飛沫すら止まる世界でスカートを捲れるのはSF的でない気がするがエモい四方山恋話なら勤しもう。

どうしてもクライマックスは尻切れてしまう限界点は見えるも「断絶」から自らの受け入れは快く、女子高生の足の動作の反復のあざとさはビジネスライクな百合モノなのだが、他者との関わりの拒絶としてのタイムストッパーと超能力なしに狂気の道に進んでしまった黒髪ロングの美少女は「それでいい。」と甘めに評価で甘やかしてしまう。

3分間時を止められるルールの曖昧さは、主観性の「信用ならない語りべ」調で、相方も能力者なのだと勘ぐったが、ディスコミニュケーションの時代の中での必死さが怖い方向へ転がり、その断絶の中で自分たちらしくあろうとする決着は悪くないだろう。甘く百合百合しい「Hurt Locker」とも言えようか。

演出的なあざとさをクリアにして5分か10分のシリーズモノとしても見たい魅力はあれど、時が止まることを「魔法」と見るか「拒絶」と見るか、着地点の希望性は極端にエモくなく、それで良かったとしっくりくる。