平野レミゼラブル

スペース・プレイヤーズの平野レミゼラブルのレビュー・感想・評価

スペース・プレイヤーズ(2021年製作の映画)
3.7
【バーリ・トゥード(なんでもあり)ならこいつが怖い!!】
#スペプレなめてました
バカ!こんなの舐める訳ないじゃな
やってみせろよ、マフティー!
何とでもなるはずだ!
ガンダムだと!?

ッスー……
鳴らない言葉をもう一度描いて
主題歌:[Alexandros]「閃光」

こういう別になめてないのに、自動的になめてたことになるハッシュタグどうかと思うッスよ。変になんか付けないで、もうちょい気軽に投稿しやすいヤツにしてくださいよ。ワーナーのやってること、正しくないよ。

それはともかく、ワーナー・ブラザースがお贈りする、バーリ・トゥード(なんでもあり)なゲーム映画!!
ゲームの世界でプロバスケット選手のレブロン・ジェームズが息子を取り戻すべく、バッグス・バニーらルーニー・テューンズのキャラクターらと共にバスケットの試合に挑む!!ルーニー・テューンズの他、ワーナーが版権を握っている『マッドマックス 怒りのデス・ロード』や『IT/イット』に『マトリックス』、『アイアン・ジャイアント』、『キングコング』といった名作に、『バットマン』や『スーパーマン』に『ワンダーウーマン』といったDCユニバース、さらに古くからは『時計じかけのオレンジ』から『カサブランカ』に至るまでの映画キャラクター達も客演するあまりに豪華すぎる大饗宴!!
そうなると、あらゆるゲームや映画にカルチャーごちゃ混ぜのゲーム空間が楽しかった『レディ・プレイヤー1』を思い起こしますが、本作の原題は『Space Jam: A New Legacy』であり、1996年にマイケル・ジョーダン主演でやはりルーニー・テューンズといったカートゥンの面々とバスケを繰り広げた『スペース・ジャム』の久しぶりすぎる続編とのこと。続編なのにレディプレ意識したような邦題にしてしまうのは割とどうかと思うものの、まあこれで前作観てない人にまで間口を広げるのは良いかもしれない。僕も前作があるとは知らず観に行っちゃったけど、しっかり楽しめたし。

話はわかりやすく、バスケ界のキングたるレブロン・ジェームズがワーナーが誇るスーパーAI「アルG・リズム」に見初められ、コラボ企画を持ち掛けられるもレブロン側が拒絶。そのことにキレたアルGは言葉巧みにレブロンの息子のドムをバーチャル世界に勧誘して取り込み、ドムを取り戻すにはバーチャルバスケ勝負でアルGと協力体制を結ぶドムが率いるチームを倒さないといけない…というもの。
前作は観てないのですが、そちらでは宇宙人とのバスケ勝負だったようで、対戦相手がAIになっているのがいかにも現代的。また、前作ではバスケ界の神であるマイケル・ジョーダンを起用したように、こちらでもバスケ界のキングのレブロン・ジェームズを家族周りの設定はフィクションながら実在の人物役として登用している豪快さです。
またレブロンとバーチャル世界でチームを組むのも前作同様にバッグス・バニー率いるルーニー・テューンズの面々。彼らは最初はおなじみのトゥーン調でドタバタしていますが、バスケ勝負からは3Dにアップデートされるのでこれまた現代風。

レブロンの演技力に関しては、今回試写会にしては珍しく上映されたのが吹替版だったため、ちょっとわからないかな……ほとんど楠大典さんの演技みたいなもんだし。ただ表情に関しては結構アニメのノリに合わせて付いていってたし、違和感はなかったように思います。
というか、ワーナーのサポート体制が万全で、中盤はほとんどルーニーのカートゥン調でレブロンが描かれて動き回らせていたので演技の負担は結構軽め。逆に言うとレブロンの演技を堪能したい人は吹替版やめた方が良いですね。劇中の半分くらいレブロンのアニメーションが大典さんボイスで喋っているだけなんで。

吹替に関してはルーニーの面々もバッグス・バニー山口勝平やダフィー・ダック高木渉を始め、鬼籍に入られたり体調が優れない方々以外はオリジナルメンバー揃えているので問題なし。龍田直樹さん(ポーキー・ピッグ)なんかはラップにも挑戦して結構サマになってるから凄いもんです。
むしろよくわからないのは、ルーニーの対戦相手であるグーン・スクワッドの面々の吹替。グーンのメンバーもやはり実際のプロバスケ選手達が演じているのですが、吹替を担当するのがサッカー選手の中澤佑二、丸山佳里奈だったり、フィギュアスケーターの村上佳菜子だったりなんですよ。そこはバスケ選手じゃないのか!?
まあ百歩譲ってスポーツ選手繋がりで良しとしても、残りの2人はココリコ田中と野田クリスタルと芸人なのでせめて統一くらいはしろよ!って感じはします。演技力に関してはまあ、うん……なんだけど、そこまで喋らないのでまあ良いかな……レベルではある。

物語についてはバスケをやらせたい親と、本当は趣味のゲーム作りを極めたい息子の親子間の確執がテーマに。アルGはドムのレブロンが自分の道を認めてくれないことへの不満に付け込んでバーチャル世界に引きずり込み、ドムのゲーム技術を応用(盗用)して悪巧みするのです。
息子を助けたくて必死のレブロンですが、その想いが一方的なことに気付かない。それはルーニー達との練習にも現れてしまいます。要は自分の意見を通そうとするあまり、なんでもありな彼らのモチベーションや持ち味を殺してしまっているんですね。
バーチャルバスケは選手に羽根が生えたり液状だったり、ボーナスポイントで滅茶苦茶な点数が入ったり、パワーアップアイテムがあちこちにポップしたりのなんでもありさなので、生真面目なレブロンは案の定翻弄されてしまう。型破りすぎるルーニー達とのやり取りで気を抜きつつ、レブロンが自分を見つめ直して息子と改めてどう向き合うかという流れはベタではありますが、だからこそ安心して盛り上がれます。

ワーナーの豊富な映画権利を活かした『マッドマックス』や『マトリックス』とのコラボ要素に関しては結構期待していたんですが、本編映像にコスプレしたレブロンやルーニーの面々をコラージュするレベルだったのでかなり拍子抜けかな……何というか、『赤ひげ』のところに高橋克実がお邪魔するCMみたいな質感のヤツが連続で並べられても嬉しくはないというか。オマケにDCメンバーに関しては全員実写ではなくてカートゥンなので、ルーニー達の異質感すら薄れてしまっていたという。
『レディ・プレイヤー1』でキューブリックヲタクとして全力で『シャイニング』の再現を試みたスピルバーグとは比べるべくもなく、また試合に参加するのもルーニーの面々のみなため物足りない。レディプレでは大活躍してくれたキング・コングやアイアン・ジャイアントといった面々も、今回はバスケットの一観客に過ぎないのは結構寂しいです。
一応プロバスケ選手+ルーニーでバスケ勝負に挑む点は旧作同様のため、そもそも『レディ・プレイヤー1』とは大分毛色が違うこと、ほとんどのゲストは賑やかしのガヤであることは念頭に置いておく必要はあるんですが、それにしてもバスケ応援している面々のほとんどがコスプレしているようにしか見えない質感なのはちょっと頂けない。白塗り連中が割と顕著で、ウォーボーイズと時計仕掛けのオレンジとペニー・ワイズなんかの集まりは完全に「コスプレ広場で集団記念撮影してる集団」です。

あと、「なんでもあり」と言っても「なんでもあり」が過ぎるきらいは確かにあって、前半は新鮮に感じたルーニーギャグも後半ではちょっと鬱陶しくなってきます。まあ、これは僕がルーニーのノリに慣れてないこともあるんだろうけども、どのみち好き嫌いは大きく分かれる感じかなァ……
ただ、外しちゃいけない部分の伏線はしっかり温めた上で機能させてはいたので、一応「なんでもあり」な中での「ルール」と「掟破り」、そして「王道」はあります。ずっと奇を衒っているワケではなくて、決めるべき部分はしっかり決めるから満足感は相応に強い。

となると、吹替版で真に「なんでもあり」を体現していたのはツダケンだったかもしれん。彼が吹替の役で演じることが多い寡黙で渋い感じの声色は成りを潜め、気分屋かつ常にノンストップでべしゃり倒す強烈なキャラクターを躁鬱激しいテンションで演じ切っています。
これまで彼がアニメで演じてきたハイテンション無法キャラクター(例:『遊戯王』海馬社長)とローテンション無法キャラクター(例:『レヴュー・スタァライト』キリン)を全て混ぜ合わせた上で、そこにドン・チードルの体が演じるテンションをスパイスにした結果、本当の本当に自由すぎるなんでもありなハイローテンション無法キャラクターと化していて超楽しい。
ルーニーのメンツも山口勝平とか高木渉といった無法者が混ざっているのに、ちっとも負けてないどころか圧倒しています。この世で最も自由なツダケン劇場がそこにある。
バーリ・トゥード(なんでもあり)ならこいつが怖い!!津田健次郎だ!!!

オススメ!