backpacker

ソー:ラブ&サンダーのbackpackerのレビュー・感想・評価

ソー:ラブ&サンダー(2022年製作の映画)
3.0
MCU映画第29作

ソーの単体映画が4本も作られるなんて、10年前の自分は夢にも思っていませんでしたが……、もうこれ以上作らなくていいかな。

前作『マイティ・ソー バトルロイヤル』にて、持て余されていた"神"としてのパーソナリティを、コメディぢからで打ちのめした剛腕監督タイカ・ワイティティと、奇跡のマリアージュを遂げたソー。
ワイティティ監督の容赦ないぶった斬りにより、過去作登場キャラは軒並みお払い箱になりました。それは、長寿の種族という長期視点を有するキャラクターからすれば相当短期間に、父、母、弟(同一人物で複数回)、友人達、挙句の果てには故郷の惑星丸ごと、本当に何もかも喪うという徹底具合。
長命種とはいえキツすぎる経験を積んだソーは、喪失からの防御反応なのか、新たに地球に作ったニュー・アスガルドを去り、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーの面々と宇宙へと旅立ちました。
心と体にタップリ付いた贅肉を搾り上げマッシブな神ボディを取り戻したソー。 
子どものような無邪気さと、壮絶な経験からくる包容力を併せ持った彼は、遂に本作で、新たなステージに至るのですが……。


結局、ソーは神としての成長を経た結果、より人間的に深みある存在となり、過去の多く(家族、出自、恋人、友人等)を喪ったことで、ただ愛を大切にする一人の男となりました。
ソーシリーズが模索した"神"と"家族"の物語は、コレでようやく一区切りついたように思えます。
母が死に、父は大犯罪者と判明した上で死に、姉が故郷と共に滅び去り、弟は眼前で殺害され、愛した女性も腕の中で亡くなり、彼女の遺志を汲み娘を家族に迎え入れる……。土台からぶち壊された家族が、一から新規構築されて行くとなると、ソーの物語はまだまだ続きそうですね……。どうすんのかしら、コレ。

神殺しが出てくるエピソードなら、「そもそもMCUにおける神々って何?」という、これまで深掘りされなかった内容について、ようやく回答が得られるかと思ったんですが……。今回も、これといってわからないまま終わりましたね。
ましてや、永久("とこしえ"。どんな願いも一つ叶える、宇宙の中心にある場所)に神々を殺すよう願う=この宇宙の神々より上位存在である神?への願い、という構造問題や、ポストクレジットにて"死後の世界ヴァルハラ"が登場したことで、MCUでの"神"とは何か、ますますよくわからなくなりました。面倒臭いから丸投げしてんのかなぁ。


今回の悪役・ゴア。
クリスチャン・ベールが相変わらずいい味出しておりますが、歴代MCU悪役の中でも、悪役である理由がわかりやすい(「どれだけ信仰を捧げても自分達を救ってくれやしない。今までの苦しみは何の意味もなかった。神なんてクソだ。俺が殺してやる」)キャラクターでしたね。
MCUのヒーロー単発作品では、悪役の魅力不足が毎回気になっていましたが2022年公開の『スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム』『ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス』『ソー ラブ&サンダー』の3作品では、悪役達がなぜヒーロー達の前に立ち塞がるのか、理由が大変わかりやすくて、ヴィランの魅力が溢れていましたね。もっとも、スパイディとストレンジは、ヴィランについて前提説明等が不要な状況でしたので、かなり高めの下駄を履いてますがね。
そんな中、単発作品として初登場ながら、文句なくわかりやすい動機を持つゴアは、奮闘努力の甲斐あって、本作でも随一の存在感でした。正直、ゴアの登場シーンが少なすぎて物足りません。ラッセル・クロウのくだりは削って、ゴアに当ててくれませんかね……。
そんなゴアを高い演技力で見事に演じ、一人だけ別作品の住人みたいになってたチャンベの兄貴、流石です。


取り止めもなく書きましたが、一番驚いたのは、永久でのラストバトル。
人種性別外見を問わず、今この場にいる者は皆、勇気あるアスガルド人だ!というぶち上げは素晴らしいんですが、まさかの少年兵バトルものを堂々とやるとは。ディズニーも思い切ったことやりますね。
backpacker

backpacker