うめまつ

ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコのうめまつのレビュー・感想・評価

4.0
猫×カンバーバッチ×画家だなんて「私この作品オーダーメイドしたかしら?」と勘違いするくらい観る前から好きだったけど、2時間かけて一番思い知らされるのは『版権(著作権)は大事』ということ。描いても描いても版権を持ってないのでずっと暮らしは貧しく、ビジネス的才覚もコミュニケーションスキルも乏しいのでひたすら描き続ける事しかできず、人気作家になっても自転車操業のような日々。ルイスが貴族階級を無視して結婚したせいで妹達は嫁ぐ先がなくなり?ずっと兄妹で暮らさざるを得ないというのも衝撃だったけど、歳を取っても姉妹全員( +兄)で暮らしてるところがリアル若草物語っぽくてちょっと羨ましかった。

二十歳あたりから晩年まで約60年の半生をギュギュッと詰め込んだ割には見やすかったけど、なかなかに辛く苦しい人生でもあるので、鑑賞中の気持ちはずっと冷たく重たい。過去の濁流に飲み込まれながら幼児退行して船で泣いてるシーン辛すぎた。そんな延々と降り続いた悲しみでぬかるんだ地面に陽が差し、ほんの一瞬虹がかかるようなラストには僅かに救いがあった。老けメイクの技術の発展と共に、カンバーバッチの骨密度から演技してると思わせる佇まいが素晴らしかった。

ルイスと妻の余りにも短い幸福なひとときを、時間を止めるかのように絵画にして焼き付けるシーンが美しく、監督の優しさが滲み出ているように感じてあたたかい気持ちになった。言葉も豊かで書き留めたい台詞が沢山あったし、とても感性が瑞々しい監督(兼脚本家)さんなんだろうなと思う。今私が猫の可愛さに溺れながら日々暮らせているのは、ルイスが猫を愛し猫に救われ猫に囚われながらも描いて描いて描き続けて、猫の地位を確立してくれたお陰でもあるのかと思うと感謝しかない。
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