タケオ

1917 命をかけた伝令のタケオのレビュー・感想・評価

1917 命をかけた伝令(2019年製作の映画)
3.9
本作最大の売りは、やはり何と言っても「擬似ワンカット撮影」だ。「究極の没入感」と「未曾有の映像体験」を追求する'戦争映画'として本作が『ダンケルク』(17年)の影響を受けているのは間違いないが、映像技術を全面に出した『ダンケルク』とは対照的に、本作はどこまでも'エンターテインメント'であることに徹している。驚異的な撮影技術を用いながらも、あまりの巧みさ故にカメラの存在を忘れさせ'エンターテインメント'として鑑賞者を没入させてまうのは、ロジャー•ディーキンスの確かな手腕あってこそのものだろう。擬似ワンカット撮影には「何も起こらない退屈なシーンがカットできない」という大きなデメリットが存在するが、そこは「ご都合主義」という映画の乱暴な性質を利用することで次から次へと見せ場をつくり出し、本作を'第一次世界大戦時の西部戦線'という名の「地獄ツアー」として仕上げることで見事にカバー。一切退屈することもなく、壮大なスケールで再現された戦場を隅々まで'体験'することができる。「技術面」のみならず「活劇」としての追求も功を成した、実にクレバーな作品だ。
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