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娘は戦場で生まれたのDickのレビュー・感想・評価

娘は戦場で生まれた(2019年製作の映画)
4.0
1. 初版2020.03.20

❶相性:良好。

➋未だ解決をみない未曽有の戦地シリアのアレッポ(注1)にあって、2012年から陥落となる2016年までの実態を、若き母親ワアドの目を通して描かれたドキュメンタリー。
①プロローグは、2016年12月。主人公の26歳の若き母ワアド(Waad al-Kateab)は、娘サマのために、アレッポの戦いの最後の日をカメラに記録していた。これが下記⑧に繋がる。
②それから、舞台は4年前に飛ぶ。
2012年4月、アレッポ大学でマーケティングを学ぶ4年生のワアドは、2011年に始まった「アラブの春」に触発され、民主化を願うデモに参加し、スマホと一眼レフカメラを構え、街の惨劇と、人々の悲鳴をカメラに収める。
②2013年、事態はどんどん悪化する。
③2015年、ロシアが軍事介入。事態はさらに悪化する。
④そんな中、ワアドは医師を志す活動家仲間ハムザ・アルカティーブと出会い、結婚する。
⑤2016年1月、2人に娘が誕生する。自由と平和への願いを込めて、アラビア語で「空」を意味する「サマ」と名付ける。
⑥政府軍の爆撃は容赦なくアレッポ市内の全ての病院が破壊される。ハムザたちは、崩れかかったビルを見つけ病院にして、懸命の治療を続ける。傷つき亡くなっていく人たちのリアルな映像が凄まじく痛ましい。ワアドはその様子をカメラに収めて世界へ発信する。
⑦政府軍の攻撃は更に激しくなり、2016年12月、ついにアレッポは陥落する。
⑧美しかったアレッポの街は破壊し尽され、瓦礫の山と化していた。
⑨ワアド一家は、最後のバスで検問所へと向う。
⑩ワアドのナレーションで、2人目の娘の命が芽生えたことが語られる。かけがえのないこの子たちの為に生きつづけよう!
★悲しい中にも希望のあるエンディングである。

(注1)アレッポ(アラビア語: حلب‎(Halab)、仏語: Alep、伊・英語: Aleppo)
シリア(シリア・アラブ共和国)北部にある都市である。トルコとの国境に近い。人口は2008年現在で約167万人あり、シリア最大の都市である。アラブ語では「新鮮な乳」の意味の「ハラブ」と呼ぶ。アレッポはシリア地方でも最古の都市の内の一つで、古代にはハルペ (Khalpe) の名で知られた。古代ギリシア人は、ユーフラテス川流域(メソポタミア)と地中海の中間に当たる戦略上の要地であるこの町を占領してベロエア (Beroea) と呼んだこともある。もともとは、クウェイク川両岸の広くて肥沃な谷にある、幾つかの丘の集まりの上に建てられた都市だった。ハラブ県の領域は市の周辺16,000 km²に及びアル=バーブ、サフィラ、マンビジ、アイン・アル=アラブなどの近郊農村都市を抱え、住民は370万人にのぼる。2007年の推計では4,393,000人とシリア最大の県である。現在、アレッポ国際空港で中東や欧州各国と結ばれている。【シリア内戦】:2011年から続く内戦に端を発した政府軍と反体制派(自由シリア軍)との対立は、2012年7月下旬にアレッポ市内にも拡大。一部では市街戦の様相を呈したため、市民の多くが市街地から避難を余儀なくされた。2012年9月28日に政府軍と反体制派の戦闘によりスークにて火災が発生し、歴史的な店舗の大半は消失した。2013年には市内においてアルカーイダ系組織のアル=ヌスラ戦線の活動が活発化。同年4月、同組織と政府側が大モスク(ウマイヤド・モスク)をめぐり攻防を行う中でミナレットが爆破された。また、モスクの宝物が盗まれる被害が出ている。2014年以降も空爆などにより市街地が破壊され、多数の犠牲者が発生している。2016年12月22日、政府軍がアレッポの全域を奪還したと宣言 。(Wikipedia)

2. 追記2020.05.19

❶賞:以下他多数:
①カンヌ国際映画祭受賞Cannes Film Festival 2019Winner:Golden Eye(最優秀ドキュメンタリー賞)
②AAノミネートAcademy Awards 2020Nominee:Best Documentary Feature(長編ドキュメンタリー部門)

➋評価:何れも極めて高い
①Rotten Tomatoes:91件のレビューで、批評家支持率は99%、加重平均値は9.0/10。
②IMDb:6,199件のレビューで加重平均値は8.5/10。
③KINENOTE:82点/100点/61人
④Filmarks:4.3/5.0/968人
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