140字プロレス鶴見辰吾ジラ

ルディ・レイ・ムーアの140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

ルディ・レイ・ムーア(2019年製作の映画)
3.8
【名前】

ドールマイトが俺の名だ!

最初は「こち亀」かよ!というテイストかと思いきや、貧乏でアングラな黒人コメディアンが自分探しとして辿り着く本作のゴールが「俺はドールマイト!」という自分の演じ続けられる姿を見つけること。貧しい、乏しい、煩わしい。それでも映画という形で自分のイチモツ以上に肥大化したエゴや、自分の信じる“笑い“を不器用で腹が出ても追い求める愚者の奇行は、愚かであるがゆえに市民権を得ることになる。なんだろ?希望とか真面目なワードじゃなくて「自分になる。」「自分を作る。」というアイデンティティに受容や愛を感じる物語。批評家やインテリはバカにするだろうが、自分の中に詰まったモノを惜しげもなく振りまける彼の姿に心動かされ、エディ・マーフィの映画としても集大成感があっていい。ストリートから生まれて摩天楼には昇れないけど、ストリートに帰着したラストシーンの映画を待つファンへ「俺の名はドールマイト」とストリートで即興を始めるルディ・レイ・ムーアという男の姿に、そしてクランクアップの挨拶も「ドールマイト風にやってよ!」のリクエストに答える彼の姿に、完成度や質の高さを超えたところにある人間的な愚かで熱情ある本質にエールをもらった気分だ。何がフォースだ馬鹿野郎!ストリートからでも克己してファイトする精神だってフォースと呼べるじゃないか!?奴の名はドールマイト!俺たちの心にだってドールマイトはいるんだ!