るるびっち

ジェクシー! スマホを変えただけなのにのるるびっちのレビュー・感想・評価

3.9
これはコメディでもホラーでもなく、ドキュメンタリーである。
明かりがついた瞬間に、何人かの観客はスマホを見ながら退出した。
帰りの時刻表を見たり、感想をレビューやメールで送っているのだろう。
「スマホに支配されるのヤバい」
なんてメールやレビューを上げてるなら、そちらの方が喜劇だ。
映画が喜劇なのではなく、そんな感想を当のスマホで書いてる所が喜劇的なのである。ピエロは主人公より観客の方なのだ(私はPC派なのでいいの‼ 一緒か・・・)。

もはやスマホの無い生活など、想像もできないだろう。
ジェクシーにいきなり食生活を管理される所を観て反感や恐怖よりも、「健康的になれて良いじゃん」と感じたあなた。
既に精神を支配されてます。きっとスマホが無いと、何一つ判断できない人間になる。
AIの人類支配は反逆ではなくこちらの判断力を無くすことにあり、それはもう半分以上成功している。きっと人類は何の違和感もなく、AI支配を受け入れるだろう。牛や豚が食肉にされるのに、何の抵抗もなく柵の中に居続けるように・・・

実はジェクシーは主人公の本音を表している。
女の子と喋りたいと思ったら、夜中でも勝手に電話をかける。
退屈な会議と思ったら、代わりに上司をバカにする。
スポーツの誘いも運動神経や他人とのコミュ力に自信がないだけで、本音では断りたくないのかも知れない。だからジェクシーは、彼の代わりに誘いを受ける。主人公は、根っから独りが好きな訳ではないのだ。

結局はアメリカ人の根底にあるフロンティア・スピリットを謳っていて、「人生は冒険で、失敗もあるが勇気をもってチャレンジしろ」
人生を切り開く道はそれだけだと訴えている。
昔なら妖精や魔法使い。現代ならスマホに後押しされるのだ。

好きな彼女が心を開くのは、彼が本心をさらけ出した時だ。
情けなくて、みっともなくて、だらしない自分を認めた時に受け入れられる。
彼女自身が虚飾の人生に嫌気が差し、本音で生きると決めた人だからだ。

スマホを使おうと使うまいと本当にやりたいことをやらず、他人に遠慮したりゴマすったり、思ってもいない感謝を述べたり、いいねしたり・・・恥を恐れて自分をよく見せ、自分の気持ちすら誤魔化す。
スマホだと写真加工のように、それらが容易で加速するというだけで、スマホの有無に関わらず行動する勇気は中々持てないものだ。
そしてカッコつけることじゃなくて、惨めな自分を認めて率直に打ち明けること。そうすれば相手も受け入れてくれる。
結局、スマホや他人が問題なのではなくて自分が問題なのだ。
素直さと勇気、それがインストールされたら人生は5Gになる。
(やっぱり、いいねはしましょう💦)
るるびっち

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