ヨーク

ホーンテッド 世界一怖いお化け屋敷のヨークのレビュー・感想・評価

3.6
個人的には結構面白かったんだけどちょっと感想を漁ると割とボロクソに言われてますね。ただまぁ本作に投げかけられる不満や批判に対して真っ向から擁護してやろうとか思うようなことは全くなく、まぁ文句言う人の気持ちもそれはそれでよく分かる、という感じの作品。しかしもう一回言っとくけど個人的には結構面白かったよ。
しかし俺が結構面白かったとか言うのは事前に数人から「この映画は後半が凄い」と聞かされていたからだとも思う。しかもその“凄い”のニュアンスは明らかに真っ当に面白い映画というわけではなく珍妙さを推したものだったので俺は本作を観る前から何となくそういう心構えで観ることができたのである。その点は大きいかもしれない。心構えというものは大事ですからね。死角から飛んでくる不意の一撃は致命的になることもあるが、具体的にどこからかという情報はなくとも死角から攻撃が飛んでくるぞということだけでも知っていれば寸でのところで致命傷を避けることはできたりする。今回は知り合いからの前情報があったおかげで致命傷を避けることができたわけです。やはり持つべきものは友。
なんか本作を遠回しにディスっているような気がしてきたが、実際俺は結構面白かったと思うんだよ。これは俺だけじゃないと思うんだが、個人的にホラー映画においては最初の犠牲者が出るまでが一番怖いと思ってるんですよ。もちろん例外もあるし、別に一人殺すも二人殺すも同じと言うわけではないけれど、最初の犠牲者が出るまでが一番緊張感があってスクリーンを観ながらヒリヒリすると思いません? まぁスプラッタ系やスラッシャー系なら始まって5分で人が死んだりするけど。それでいくと本作は序盤からお化け屋敷に至るまでの流れとか、何か不穏なものを感じながらもふざけている大学生のノリとかすごく良かったですね。実にオーソドックスでそつのない理想的なホラー映画の始まりだったと思う。
メイン舞台となるお化け屋敷に入ってからも不気味さと恐怖を煽りながらいつ主人公たちに犠牲者が出るのかとドキドキさせる演出は十分怖かったと思う。だけどまぁあれだよね、別に本作に限ったことだけじゃないけど一人犠牲者が出ちゃうとその緊張感は緩むよね。これはもうホラー映画が抱える問題の一つだと思うけど、いつ殺されるか分からないハラハラドキドキがいざ現実になったらヒャッハー! 血だ! もっと血を見せろ! ってなっちゃうの。人間ってのは野蛮ですねぇ。いや俺だけか。
というわけでお化け屋敷のピエロたちが殺人鬼集団だというのが分かってからはもうギャグみたいになっちゃう。上でも書いたように後半20分位とかは実際凄いよ。二重の意味でのやっつけ展開で一気に巻きにかかる。もう地下から地上への通路の件とか完全に笑わせに来てるテンポだったもん。ストーリーの回収とかも雑もいいところだったなぁ。いやこれ本当に支離滅裂になっているので、多分大人の事情的なもので本来のストーリーからかなり変更してるんじゃないかなと思いますよ。そういう読みをしている感想も目にしたんですが俺も多分そうなんじゃないかなと思います。
設定は面白いしゴア描写も割としっかりしているし、ホラー展開へと進んでいく導線も丁寧なのでそこまでボロクソに言われるほどの映画ではないと思うんですよ。ただまぁ後半のやっつけ感はすさまじい投げっぱなしだとは思うので真面目にちゃんとした映画観たい人はそこがダメなのかもしんないですね。俺的にはあれくらい破綻しているのはむしろアリだろうと思うんですけど…。
最後に本作で一番面白かったのは冒頭のシーンでした。別にネタバレでも何でもないから書くけど本作の舞台になるお化け屋敷は殺人ピエロたちがDIYで作り上げたものだというのが冒頭で語られるんだけど、手作りなんだ…というのは衝撃ですよ。元からあるお化け屋敷に手を加えたとかじゃなくてガチなやつじゃないですか…。鉄腕ダッシュかよ…。その殺人に対する真面目さが冒頭から襲い掛かってきてダメでしたね。まぁ結局ピエロ共が何なのかよく分からないんだけど…。彫り師とか言われても…ねぇ。
あとエンディングのやっつけ感はむしろ好きだぞ。よっしゃ撮影終わり! 飲みに行こー! みたいな勢いを感じたよ。面白った。
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