140字プロレス鶴見辰吾ジラ

イン・ザ・トール・グラス -狂気の迷路-の140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

3.7
【神隠し】

たかだか丈の高い草むらが、そこに入ったら抜け出すことのできない地獄へと姿を変えていく発想はいやはや素晴らしい限りで、空間軸や時間軸も早い段階で破壊してしまう思い切りの良さも、そして謎めく設定は宇宙でなくともモノリスを新たなロジック上や宗教上で顕在化させる。狂気の中で人の心が剥き出しになって雑草の如く絡まっていくのもまた面白い。明確な答えを解釈まかせに出来る段階でNetflix配信の企画書と上層部の目の届かないところに逃げ込んでいるようだ。

何となくダーレン・アロノフスキーの「マザー!」のような狂気性を孕むも、その中で宮崎駿の「千と千尋の神隠し」が見え隠れする。冒頭の子ども助けを呼ぶ声からの逆インバイトは最高にそそる。カオナシを呼びこんじゃいけない。そもそも論、原因を探るよりも各々の腹の中を見ろ!的なクライマックスの矛先ゆえにテーマパーク的に楽しんだ後、あれこれ考え込むのが本作の醍醐味だろう。何の目的で何の差し金かはこの際おいておこう。しかし何かが犠牲になり、何かが成長し家族を再形成するウネリのようなものは、本作の“神隠し“性のエネルギーに寄与されている。グッドシネマに追加だ!