きまぐれ熊

羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来のきまぐれ熊のレビュー・感想・評価

4.2
良かった〜。
モブサイコとか好きなアクション作画オタクに勧めたい。

ざっくり全体的な感想だとストーリーは薄めだけど、キャラクターの作り込みと世界観の設定に並々ならぬ愛情を感じる。

その上で異常なアクション作画なので、
いい意味で「僕が作った最強の仙道アクションまんが」みたいな印象を受ける。
そして、これは作品の成立過程を追って見るとあながち間違ってないみたい。


そもそものIPのスタートは個人制作の1話数分のWebアニメからスタートしている。ジャンルとしては映画とは大きく違い、日常もの。
主人公は映画と同じシャオヘイ。世界観はWebアニメの時点で完成してるので、ほのぼの日常ものに壮大な世界観を感じさせる様な内容。たまにまんがタイムきららにあるようなシリアス要素が背後にある日常4コマっぽい感じみたい。

動きの良さの片鱗はWeb版をちょっと見ただけでも感じ取れるけどあくまで日常とのダイナミクスを感じさせるフレーバー程度。

映画の時系列としてはWeb版のエピソード0に当たる前日譚だけど、今作だけではWeb版までにまだ乖離があって、直結してない。
実は三部作計画とのこと。ただし、本作単体でも物語としてはひとまず決着するので何の情報もなく見ても大丈夫。

世界観やキャラに興味が湧いたらWeb版観ればいいと思う。
個人的には哪吒が大暴れしてるシーンが見たかったけどこれはWeb版で見れるのだろうか。次回作以降に持ち越しだろうか。


本編の魅力は、とにかくバトル作画。
柔らかいキャラデザの持つ可愛さと、そこからのギャップによるド迫力仙道バトルのダイナミズム。
日常ものにマッチする柔らかな太い線でグリグリカメラを動かしまくるバトルのダイナミックさは他に類似作品が見当たらないし、意図的に設計されたものだと思う。劇場版で急にここまでジャンルを変える勇気は凄い。でも単純にやりたい事やったんかなって感じもする。
強いて言えばナルト神作画回の影響があるかも...?
瞬間移動の演出が、「速すぎてカメラが捉えられない」のに何が起こってるかはギリギリ分かるって表現がスタイリッシュすぎて未来を感じた。特に電車内でのバトルシーケンスはヤバい。
異能を使ったアクションも一つ一つの動きや技にめちゃめちゃアイディア詰め込まれててスローで見ても楽しい。

バトル以外の作画もずっとよくて、テクスチャや撮影効果で誤魔化すのではない、ひたすら輪郭でモーフィングするストロングスタイル。
背景はジブリの影響が強そう。ってかWebアニメの1話からハウルのパロディやってる位なので間違いなく強い。テーマ的にもぽんぽことか、もののけ姫とか色々拝借してる感じはある。けど、本作の魅力から言えば割と枝葉というか表面的な所だと思う。
背景がジブリっぽくてもやっぱり内装や衣装、笑いの間なんかに異国の文化である特徴が顕著で、価値観の違いを明確に感じられる。不思議な感じだ。
欲を言えば次作以降はそういう独特な文化や価値観を、普遍性のあるストーリーとして掘り下げてくれるのに期待したい所。多分まだまだ内輪ノリ的というか。文化の前提が分からないので伝わらない笑いやテーマ性がストーリー面に多いから薄く感じるんだと思う。

例えば哪吒くんのトレードマークがお団子だから男子でもお団子をアクセとして付けてる、ってギャグシーン。
そもそも哪吒というキャラクターがさまざまな作品に登場するほどの国民的人気キャラで、必ずお団子ヘアーがアイコンイメージとして付いてる、ってとこまで前提知識がないと笑えないからね。調べないとわかんねぇわw
普遍的なところに笑いなんかを噛み砕いてくれるともっと勧めやすい作品になる。今でも凄い作品だけど凄いと受け取る人は限られる感じ。


個人制作から発展したコンテンツの醍醐味は、個人ならでは濃密な思い入れや哲学をダイレクトに感じられる事もあるけど、何と言ってもクオリティやメッセージの伝え方が作品を追う毎に研ぎ澄まされていく過程を楽しめる事に尽きると思う。新海誠なんてその典型ですよね。

シャオヘイやムゲン以外の、魅力的なキャラが個性を発揮し切る前に本作は終わっているので、今後の展開が非常に気になる。
次回作は2025年予定との事。
クオリティは裏切られなさそうなので気長に待ちます。
きまぐれ熊

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