バルバワ

リチャード・ジュエルのバルバワのレビュー・感想・評価

リチャード・ジュエル(2019年製作の映画)
4.4
今回の隠れシネシタンは期せずしてサム・ロックウェル二連続になりました、サム・ロックウェル、良~い役者です。←太田胃散風

嫁という法執行官にバレずにコソコソ…それが隠れシネシタンだッ!

いやぁ…バカにすんな、バカにすんなよ!

あらすじは善良なオッサンが世間にめっちゃ褒められた後、めっちゃめちゃイジメられる!…的な感じです。

『アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル』『ブラック・クランズマン』でアカデミー賞ものの名演を観せたポール・ウォルター・ハウザー演じる善良な警備員のリチャードに感情移入しまくりでしたね。そして、結構余計なことしたり言ったりするんですよ…彼がミリタリーオタク故に銃器がどっさり出てくる場面は思わず「あちゃ~」と言ってしまいそうになりました。

仕事でもリチャードは強い正義感が裏目に出てトラブルになったり、職場でのコミュニケーションが上手くいかなかったりするのですが、なんか他人がなんと言おうと人命と規律を重んじるその姿が若干キャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャースとかぶりました。しかし、それを端正な顔立ちのムキムキマッチョマンがするのとずんぐりとした顔立ちと体型のオッサンがするとでは違うのですよ…残酷な話。例え、彼が事前にテロを防いだとしても。

今作のオッサン差別問題についてはハードコア映画ライターのデッドプー太郎さんが素晴らしい文章を書いていました。今作を観て涙したオッサンとしては非常に刺さる名文でしたよ!

例え彼が事前にテロを防ぎ大勢の命を救ったとしても外見や趣向、経歴だけで偏見の目を向けられ自作自演のテロリストとされてしまうし、FBIも証拠もないくせに彼を重要参考人として標的を定め、結果マスコミが煽り、世間の想像力が暴走し大騒動に発展。結果、彼や彼の家族の尊厳を踏みにじる様はもう腹が立って仕方がありませんでした。

捜査の仕方がほとんどヤクザなFBI(やたら「一般論では…」と宣うのもムカつく!)もそうですが、この騒動の発端となった記事を書いたあの女性記者がもう抜群でしてね、今年を代表する悪役になる予感が致します。基本的に記事が面白くなれば人命や尊厳、倫理などはどうでも良い…端的に言って決して友達にならないタイプの人種です。

バーでこれまた感じの悪いFBI捜査官にリチャードがテロの犯人と聞かされた時にこの女性記者は「実家暮らしの醜いデブね」と一言。てめぇぶっ飛ばすぞ!
終盤このキャラクターの心境の変化が描かれるのですが「だからどうした」という心底どうでも良くて、むしろ違和感でした。これはこの女性記者の描き方に批判があったから少しテコ入れしたのかなと邪推したり…。

対照的にサム・ロックウェル演じるワトソン弁護士も自分の信念に生きる男でFBIの雑なガサ入れに対してもヘラヘラ対応するリチャードに対して「いや、怒れよ!」と一喝したり、FBIに対しても「アイツらは国に雇われてるクソ」と言い捨てる気っ風の良さに加え、リチャードとシューティングゲームしたり、リチャードが爆弾から人々を守ったことを誇らしく思ったりとグッドガイな面もあり好きにならざるを得ないです。

終盤、ワトソン弁護士が「反撃開始だ」の台詞から瑠飲が下がるシーンが満載でした。特にFBIに乗り込んで捜査官に演説するシーンと、捜査官がカフェでお茶をしているリチャードとワトソン弁護士を訪ねてくるシーンは嗚咽混じりにボンロボロ泣いてしまいました。そしてそのカフェでリチャードが食べていたものはFBIのマークと同じ形をしたドーナッツというのがまた意味深じゃあないですかっ…!←ウザいテンション

とにかく、オッサンだろうが太っていようが実家暮らしだろうが関係なく、正しいことを行った人物を大いに褒め称えるような社会であってほしいと改めて願いたくなる一本でした。
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