新潟の映画野郎らりほう

聖なる犯罪者の新潟の映画野郎らりほうのレビュー・感想・評価

聖なる犯罪者(2019年製作の映画)
4.3
【この製材所で 天使はバスを降りた】


抑、聖人君子である必要なぞ全く無いわけだ。
宗教とは 虚像のストーリーを皆で共有する事が重要なのであり、それ自体本来的に嘘の要素を孕んでいるのだから。

でもそんな事はどうでもいい。
劇中ダニエル(ビィエレニア)が 磔刑のキリストを見遣り「僕には決して真似する事は出来ない」と評する。
然し 最終局で彼が受ける“パッション/受難”を目にし はたと気付く。彼は“本物/キリストそのもの”じゃないかと。


鮮血に染まりし相貌上に 見開かれた目に、キリストのRapture“再臨の狂喜”が宿っていた―。




〈追記〉
嘘つきの行動が 奇しくもキリストに準えられる。然し そのキリスト(宗教自体)も 広義的嘘であり、では両者は何が違うのかと。救われる人がいる、これは紛れも無い事実である。

人はストーリーを共有する事で 一体と為り 癒され 浄化する。件の交響曲ヒロシマも 振り込め詐欺も 本質的には何も変わりはしない。街の人々が囚われ続ける“あるストーリー”も。
彼等は騙されたのではない。信じたのだ、癒される事を。
「この作品は事実に基づく」とゆう本作冒頭テロップも、メタ的に機能する。


本当の宗教とは、神とは、真実とは、そして 嘘とは―。
その根源への疑符が漲っている。




《劇場観賞》